ディラックフェルミオン系に磁性不純物が存在する場合における局在スピンとフェルミオンとの相互作用について考えてみましょう。
この場合にも近藤効果が起きます。この系はスピンー軌道相互作用が存在する時の近藤効果と類似性があります。
この時、電子のエネルギーの分散は線形になり、その線形分散が物理量にどのように影響するかという問題になります。
ディラックフェルミオンはトポロジカル物質にも現れ、トポロジカル物質における近藤効果も興味ある話題です。
ディラックフェルミオンとしては次のハミルトニアンで与えられるものを考えます。
ここで、ψ は2成分の場であり、
とします。スピンアップとダウンをまとめて一つの場として表したものです。
相互作用も含めた全ハミルトニアンを H=H0+Hsd と書きますと次で与えられます。
近藤効果においては、フェルミ面が存在することと局在スピンが内部自由度を持っていることが重要です。
近藤さんは、近藤効果に関連する現象を「フェルミ面効果」と呼んでいました。1964年の抵抗極小の論文においてすでに、
フェルミ面効果により抵抗極小が起きると書かれています。
ディラックフェルミオン系においては、フェルミエネルギーの位置に依存してフェルミ面の大きさが変化します。
それに伴い近藤温度 TK も変化します。
下の表に近藤温度 TK の表式を示します。
フェルミエネルギー μ がカットオフ(バンド幅)に比べて小さい時は、TK は |μ| に比例します。
フェルミ面が点になってしまう場合には、局在スピンに対する遮蔽が起こらず近藤効果が起きないことがわかります。
参考文献
[1] T. Yanagisawa: J. Phys. Soc. Jpn. 81, 094713 (2012)
"Kondo effect in the presence of the spin-orbit coupling"
[2] T. Yanagisawa: J. Phys. Soc. Jpn. 84, 074705 (2015)
"Kondo effect in Dirac systems"
[3] T. Yanagisawa: J. Phys. Conference Series 603, 012014 (2015)
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