Hubbard model
 
       
 
固体中の電子間にはクーロン相互作用が働いていますが、バックグラウンド(すなわち原子核の)の正の 電荷により遮蔽されて、長距離相互作用が有効的に短距離相互作用になっていると考えます。ハバードモデルは短距離のクーロン相互作用のみを考えた、固体中の電子系を記述する基本的なモデルの一つです。クーロン相互作用の大きさは電子の波動関数の広がりに大きく依存します。空間的に広がった電子系ではクーロン相互作用が弱く、電子達は自由な電子のように振る舞います。この時は一体近似の波動関数により電子系が記述できます。一方、波動関数が局在した傾向にある電子間には強いクーロン力が働くと考えられます。
 ハバードモデルは絶縁体を記述するモデルとしてハバードによって最初に考察され、ハバードバンドというアイデアが提案されました。ハバードモデルにおいては、クーロン相互作用は、オンサイトの相互作用項のみ存在します。MnO、FeO、CoO、Mn3O4、NiO、CuOなど一体近似では金属的で あるにもかかわらず、実際は絶縁体となっています。これらの物質においては電子達が近づくとクーロン相互作用によりエネルギーを損するために、絶縁体になっている考えられています。このような絶縁体はモット絶縁体とよばれています。クーロン相互作用が小さければ金属的ですが、大きい時は絶縁体であると考えられ、その間で金属から絶縁体に相転移を起こすことになります。これはモット転移と言われています。短距離のクーロン相互作用から反強磁性の相互作用が生じますので、絶縁体状態では反強磁性秩序が生じることがあります。狭義には反強磁性秩序のない絶縁体をモット絶縁体と言うことがあります。反強磁性長距離秩序が原因 で絶縁体になったのか、クーロン相互作用により電子が動けなくなり絶縁体になったのか、見分けるのは難しい問題です。
 ハバードモデルにおいて電子系はどのような状態にあるのでしょうか。 ハバードモデルにおける可能な電子相を明らかにすることは、遍歴電子系の多様な電子状態の可能性を明らかにすることでもあります。モデルは非常にシンプルですが、一次元系を除いてどのような相が存在するかはまだ明らかになっていません。




原子間を動き回る電子のモデル


文献

[1] J. H. Hubbard: Proc. Roy. Soc. A276, 238 (1963). (Hubbard I)
[2] J. H. Hubbard: Proc. Roy. Soc. A277, 237 (1964). (Hubbard II)
[3] J. H. Hubbard: Proc. Roy. Soc. A281, 401 (1964). (Hubbard III)
[4] M. C. Gutzwiller: Phys. Rev. Lett. 10, 159 (1963).
[5] J. Kanamori: Prog. Theor. Phys. 30, 275 (1963).
[6] A. B. Harris and R.V. Lange: Phys. Rev. 157, 296 (1967).
          (Heisenberg modelへの変換)
 
  Condensed Matter Physics Group: Nanoelectronics Research Institute