量子論の世界
 
       
 
  電子や原子は、日常の感覚とはかけ離れた量子力学という物理法則の体系に従っています。 量子力学は20世紀初頭の二つの重要な発見から始まりました。それらは

(1) エネルギー量子の発見
(2) 波と粒子の二重性の発見

です。
 すべての物体はそれ以上分けられない基本的粒子から成り立っているわけですが、エネルギーもいくらでも小さくわけられるような連続量ではなく、エネルギーの単位ともいうべきエネルギー量子という量があり、実際のエネルギーはその整数倍で与えられるというのが、プランクの考えです。エネルギーに最小の量があるというのはちょっと不思議なことです。このエネルギー量子は非常に小さな量であるために、日常の生活には現われてきません。原子や分子のような微少な世界ではじめて顔を出します。
 電子はマイナスの電気量を持ったれっきとした粒子ですが、波としての性質も示します。これもとても不思議なことです。水面にできた波を見るとわかるのですが、二つに波があるとき、波の山の部分が重なると波は強くなり、山と谷の部分が重なると打ち消し合って弱くなります。これは干渉と呼ばれている現象ですが、電子もこれと同じ干渉効果を示すことが発見されました。このため、電子は粒子であるが波でもあると考えないわけにはいかなくなりました。量子力学的粒子はすべて粒子であると同時に波の性質も持っています。
 こんにちのエレクトロニクス技術においては量子、波の性質が本質的に重要となっています。半導体、トランジスタ、ダイオード、コンピューターなど日常生活でもなくてはならないものとなっていますが、これらは量子の世界の法則に従って動いています。今や技術の進歩はすばらしく、原子1個を操作することも可能になってきました。このような技術はナノテクノロジーとよばれています。電子1個をあやつることにより究極のコンピューターを作ろうという考えもあります。
 原子よりもミクロな世界もあります。クォークも含めたすべての量子力学的粒子を統一した理論で説明しようという試みが大統一理論です。我々の世界はスケールが異なる階層構造から成っていると見ることができます。面白いことに、各階層において類似の物理法則に従って物理現象が起きています。
 なお、波と粒子の二重性は場の量子化によって理解できます。場とは時空の各点ごとに値をもったもの、すなわち時空の関数です。波動方程式を満たすとすると、場は波の性質をもちます。この場を量子化すると粒子としての量子力学的粒子を記述することができます。今は絶版となっていますが、

 『量子力学の考え方』(伊藤大介著)(河出書房)

にやさしい解説があります。
 
 
  Condensed Matter Physics Group: Nanoelectronics Research Institute