赤い火山灰で探る三宅島の地下
by Isoji MIYAGI @ Geological Survey of Japan, AIST
- 文責:宮城磯治
- 作成日:2000年?月?日
- デザイン変更:2008年4月27日(日曜日)
これは,2000年9月19日に行なわれた実験風景の取材の際に記者さんとなされた問答です
NHKニュース10 (2000年9月25日放映)
- 主要な質問:
- ★どうして火山灰が赤くなるのか?
- Q.赤色の原因は?
- A.酸化した鉄分の色.
- 鉄分は酸化状態によって色々ないろになる.
- 酸素が少ないとうすい緑色,ちょっとあると濃い緑色,酸素が多いと赤色.
- 鉄さびが赤いのと同じ.
- Q.何故鉄分が酸化される?
- A.大気が酸化的だから.
- 私達が住む地球の表面は,酸素がたくさんあるから.
- 一方,地球の中には余分な酸素が少ない.酸化的でない.
- ですから,マグマを高温で大気にさらすと,酸化して赤くなります.
- 赤い色の濃さは,酸化の程度によってきまります.
- Q.火山灰がもともと赤くない(青灰色)のは何故か?
- A.それは冷却とのかねあい.すぐ冷えれば赤くならない.
- 小さい/細かいものほど速く冷える.
- 火山灰は非常に細粒で表面積が広いので,あっという間に冷える.
- だから,ふつうはやや緑色がかった灰色になります.
- 直径1ミリの灰はすぐ瞬時に冷えるが,厚さ10mの溶岩は数年かかる.
※逆に,色の濃さを調べると,加熱された温度が推定できる.
- その他の質問:
- ★噴石の温度が高いとどういう危険があるのか?
- 当然ですが,高温の岩石が家など可燃物の上に落ちれば,火災になる危険性があります.木材の発火点(火がなくとも発火する最低温度)は250-300℃ぐらい.
- 温度の高いものが噴煙に多量に混じれば,温度の高い火砕流が発生する可能性があります.
- ★噴石によって灰が赤くなるところと そうでないところがあるのはなぜなのか?
- 温度によって二種類にわけると, ひとつは今回のマグマが吹き飛ばされたもの,これは高温です. もう一つは,マグマの通り道にあった岩石が壊されたもの,これは低温です.
- ですから, 今回のマグマに由来する高温の噴石だけが,火山灰を赤く焼いたのです.
- ★噴石の温度から考えられる地下のマグマの状況とは どのようなものなのか?
- この結果から直接言えることは, 少なくとも十分高温なマグマが地下に存在していて, 噴火に直接かかわっているということ.
- すなわち,地質調査所が提唱している三宅島のマグマモデルの一つの有力な証拠です.
- ★今後,研究を続けることでどのようなことが判るのでしょうか?
- さらに詳しいことは,他のデータと併せて,よく考えなければならない.
- 全島避難をいつ解除するか,今後の活動を予測する必要があります.
- 一般に,予測を行う方法はおおまかに二種類ありまして, ひとつは仕組みを十分理解したうえで理想的なモデルをたて, これを計算機の中などで(時間をすすめて)シミュレーションする方法です.
もう一つは,理屈はともかく,過去の経験にあてはめて次に起るパターンを見つける方法です.
- 地質調査所では,今回の噴火にマグマが直接関与していたモデルを採用している.
- 九月に入ってから火山ガスの放出量が急激に上昇した.
- 個人的には,これはマグマの通り道が広がって,火道内をマグマが対流しながら脱ガスしているためと考えている.
- ★噴出物を調べることの意義とは何でしょうか?
- マグマは火山ガスの源です.噴出物はマグマからの手紙です.噴出物を調べることによりマグマ中の火山ガス濃度が推定できれば,火山ガスの観測結果と併わせることにより,マグマの脱ガス進行状態が把握できる可能性があります.