ヘリコプターから見た2000年12月27日の三宅島
by Isoji MIYAGI @ Geological Survey of Japan, AIST
- 三宅島ヘリ観測報告
- 観察&撮影:宮城磯治@地調
- 警視庁ヘリ(同乗者:大島@東大,金子@地震研)
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今回の観察で顕著だったことは,まるで9月頃のように噴煙に勢いがあったことである.
目次 |
三宅島まで
離陸&都内上空
東京ヘリポートより,警視庁ベル412ヘリにて.
同乗者は東大大島さん,地震研金子さん.
ヘリポート出発は09:19.
全行程を通じて視界は非常に良好.都内上空からは純白の富士山が見えた.
利島,新島,式根島,神津島
神津島到着前10:00頃から三宅島の遠望ができた(遠くで煙をあげているのが三宅島).
三宅島の周囲が黄橙がかって見える.その理由は,上空の二酸化硫黄によって青っぽい光が散乱して青色が不足した分,通過してきた光が黄橙になったためだろう.
神津島に寄る
途中,人員交代と燃料補給のため,神津島空港に10:22着陸,10:45離陸.
崖のところどころに見える白い部分は,地震による崖崩れによってむき出しになったところ.
ヘリのドア(写真とは反対側)を開けて観測を行なうため,命綱をつける.
神津島を離陸し三宅島上空に向かう.
噴煙の高度ここ数週間で最も高く,2000メートル以上あった.およそ1500メートルの高さには水平に広がる雲がみえる.これは噴煙が拡散したものと思われる.
三宅島上空に到着
噴煙
観察開始は10:55ごろ.
今回の観察で顕著だったことは,まるで9月頃のように噴煙が元気に見えたことである.
以下,本文では噴煙を3つに分けて認識することにする.それらは,主要なプリューム(#1)と,その下に帯状たなびく煙(#2)と,水平に無指向性に広がった煙(#3)である.
上の4枚の写真には,主要なプリューム(#1)から次々と青白い霧(#2)ができている様子がよく分かる.
主要なプリューム(#1)は白色で,火口から一気に上昇している.その上面高度は,ヘリコプターの高度計で8500フィート(約2500m)あった.
たなびく噴煙の下には(#2)青白い霧「硫酸ミスト」があり,西の風に吹かれて,三宅島空港から三池にかけての方向に流されていた.
ちなみに,左から3番目の写真右上にみえる影は,御蔵島である.
帯状にたなびく煙(#2)が拡散したのが水平に広がる煙(3#)と思われる.広がった煙(#3)は高度が1500m程度で,上面の境界は比較的明瞭である.下面高度は500−1000m位で境界はやや不明瞭である.その広がりかたはほぼ無指向性で,神津島付近からの遠望では少なくとも島の直径の二〜三倍以上のあるように見えるが,末端ではそれと雲との区別がつかず,結局目視ではよく分らなかった.この煙(#3)はあまりにも規模が大きいので,航空機よりもむしろ人工衛星等の画像等による検討のほうが有効かもしれない.
陥没火口内の様子
ここ数週間,三宅島の噴煙は陥没口を出てすぐ横にたなびくことが多いためヘリが近づきにくく,火口内も噴煙で満されて視界が悪かった.しかし今回は,噴煙は勢いよく垂直に上昇しているため,噴煙に航路を妨げられることなく陥没地形を全周,ぐるりと低空から観察することができた.視界も良好だった.
観測のためヘリコプターのドアを開く.
陥没火口内に立ちこめるガスはここ数週間では比較的薄く,火口底がよく見えた.
噴気孔を出たばかりの噴煙はやや白味が少ない.(高温だと水蒸気が凝集して湯気[霧滴]になりにくい.水蒸気そのものは透明.)よって,もしかすると高温なのかもしれない.
※参考:[34]10月19日の火口内の様子 (ヘリ観測 by 宮城@地調)
その他,火口内の様子はこれまでの報告とほぼ同じ.スオウ穴の水の色はやや赤い灰色で,以前のようにどぎつい色ではなくなった.スオウ穴東側の火口縁直下に火山体の新鮮な断面見えているのが印象的(左から3枚目の写真中央).
※参考:[39]三宅島の池が赤く変色した件について (宮城@地調)
金子さんが火口底のレーザー測距を,大島さんが角度計測を行なった.
その他,カルデラリムのひび割れなど
中野氏が[44]12月25日 の観測の際に報告した,カルデラリム南部のひび割れを確認できた.その後特に広がった様子は認められなかった.
村営牧場から雄山への自動車道路.泥流による損壊が著しい.
三宅島上空での観察終了は11:43.
帰投
自然の営みと,人間の営み
帰路,上空から人工の煙を見て,なんて小さいのだろうかと思った.三宅島の膨大な火山ガス放出を見てしまうと,人間の営みなど微々たるものに感ずる.※遠くに富士山が見える(朝ほど良くみえない).
なぜこんなにガスが出るのか!?
※参考:[47]三宅島2000年活動に関する見解 (地下のマグマから盛んに脱ガスが起きるモデル;地質調査所)
※参考:[48]9月以降の三宅島脱ガス活動の推移について (地質調査所)
※参考:[49]COSPECを用いた三宅島の二酸化硫黄放出量の測定 (地調,気象庁,東工大)
※参考:[50]ヘリ塔載のガス濃度計を用いた三宅島噴煙の二酸化炭素・二酸化硫黄・硫化水素測定 (地調)
※参考:三宅島2000年噴出物の構成粒子について(宮城@地調)
航空隊の皆様に感謝
観測のため三宅島上空を長時間周回していただきました.火山ガスを避けて飛ぶのは普段より神経を使うのではないかと思います.お疲れさまでした.機体をバンクさせながら東京ヘリポートにアプローチ.着陸は12:39.
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12月27日のヘリ観測の行程メモ:
04:55 起床.
05:45 自宅(茨城県つくば市)を出る.
07:00頃 気象庁より,飛行決行の連絡を受ける(常磐線列車内にて).
08:20 東京ヘリポート到着
09:19 ヘリ離陸.
09:40 洋上に出る.
09:53-10:00 伊豆大島通過
10:00 遠くに三宅島が見えた.
10:08 新島通過
10:22 神津島に着陸
10:45 神津島を離陸
10:55 三宅島上空に到着.観測開始.
11:43 三宅島離脱.観測終了.機内でデジカメとVTR検討.
12:15 本土上空にさしかかる.
12:39 ヘリ着陸.気象庁に移動.途中昼食をとる.
14:40 気象庁に到着.観測結果報告.宮城撮影のビデオをダビング.
16:20 帰路につく(つくば行き乗車).
17:30 地質調査所(茨城県つくば市)に到着.