野外調査のデジタル化

2010~2012年に、野外地質のひとつの可能性を探た記録です.現在では古くなった内容も含まれますが、参考になることも少なくないので、アーカイブとして置いています.


 野外地質人口の減少を嘆くだけでは何も解決にならないので,新しい調査手法を探る試みを始めています.手始めに,長らく紙と鉛筆で行われてきた観察記録を,デジタル機器を使った入力に置き換えることを試しています.
 このような取り組みは欧米の一部では進んでいますが,高価な専用のシステムを必要とするものが多く,まだ普及しているとは言えません.真の普及には,安価に実現することが必要です.そこで,汎用品を組み合わせて実際にテストしてみました.

 これまでに発表してきた成果の一部は、以下のリンクからどうぞ。
 野外テスト結果については「デジタル化テスト概要」でどうぞ.

調査記録と電子データ

 野外調査の観察記録とは,野外の事実を,縮小して仮想的に再現できるようにすることです.そのために,地図や野帳に記述したり,写真を撮ったり,サンプルを採取したりします.
  野外調査と観察記録
 持ち帰るデータや試料は多ければ多いほど再現性が高いのですが,一方で野外調査には時間的・空間的制約があり,効率よく行う必要があります.したがって,現場ではいかに効率よくデータ取得ができるか,室内に戻ってからはいかに多くの情報を再現できるかが重要になります.
viliv X70  地質調査の観察記録は,これまでは紙と鉛筆によるデータ取得が主体でした.21世紀になると,ITの進歩と普及に伴い,世界の中ではPDAやポータブルPCによるデジタル入力を取り入れる例も出てきました.また,露頭や地質調査人口減少のため,貴重な野外調査データを保管・集約・共有したい,それも検索性を考えるとデジタルアーカイブとしたいという要求が出てきます.紙のデータをデジタル化するには多大な労力が必要なので,調査段階からデジタルデータで保存できれば便利です.更に,野外調査で最もよく使う国土地理院の2万5千分の1地形図は,これまで国土の基本図と位置づけられてきましたが,今やその役目は電子国土へと変更され,ウェブ上の電子データとして利用可能になっています.今後,日本国内でもデジタル入力は広まってゆくと予想されます.

今後の展開

 野外調査のデジタル化は地質・地球科学の分野だけのことではありません.仕事でも趣味でも,野外でのデータ収集を行うすべての分野に関係します.あらゆるフィールドワークのデジタル化です.
 野外でまず必要なのは使いやすい地図です.既に様々な地図が有償・無償の電子データの形で出回っていますし,これからますます便利になるでしょう.紙の地図の利便性を越える日も,そう遠くないかも知れません.次に,野外調査の労力軽減です.多少の慣れは必要ですが,野外調査のデジタル化により,野外から室内までの全体 (調査・清書・保管・公表など) に必要な総労力を減らすことができます.特に,清書不要となれば,昼間に頑張れば頑張るほど夜もつらいという現状のジレンマを大きく改善できます.
 こうして地質調査はより便利に快適になり,また最先端の携帯型端末を使い倒す業種となります.そこには若い人材の関心・参加も生まれてきます.今は人材不足に悩む野外地質学に,少しでも追い風となることを期待しています.

外部リンク

 デジタル機器を使った野外調査に関連するページのリンクです.
Digital geologic mapping - Wikipedia
Wikipediaにある解説ページです.欧米における現状が総括されています.
Digital Mapping Technique
USGS (米国地質調査所) のサイトにあるDigital Mapping Techniqueというワークショップのページです.
SIGMA | System for Integrated Geoscience MApping
BGS (英国地質調査所) の開発している地質調査用ソフト「SIGMAmobile」のページです.

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