能登半島の最先端に相当する珠洲岬,能登飯田及び宝立山地域では1992~1999年の期間に調査を行い、地質図幅は2002年に出版されました。地域内に分布する古第三紀~新第三紀の火山岩・堆積岩および第四系の調査と全体の取りまとめを担当しました。
当時はバブル経済がはじけるとともに、地域にとっては原子力発電所の建設を受け入れるか、能登空港を建設するかなど、重要なターニングポイントとなるテーマが幾つもありました。それらが落ち着いたところに、2024年1月1日の大地震、そして2024年9月の豪雨が来ることになろうとは想像もできませんでした。今となっては古い成果ですが、今後の研究・復興のお役に立てれば幸いです。
珠洲岬,能登飯田及び宝立山地域の地質は、古第三紀より新しい時代の地層・岩石からできています。
- 岩相の上からは、下部が陸成の火山岩類、上部が海成の堆積岩類、最上部に第四系の堆積物と重なっています。
- 地質構造からは地域の中央部を東西に横切る白米坂断層を境に、南部のほぼ傾動していない地域と、北部の変形・変動の激しい地域とに分けられます。
- 古第三紀~
新第三紀の火山岩類 -
古第三系~新第三系の下部は、主に陸成の火山岩類から構成されています。これらは日本がまだ大陸の一部であった時代から、日本海の形成が始まり、やがて湖や浅海になってゆく時期に活動した火山の噴出物および貫入岩です。この時期には正断層活動が続いていました。
- 新第三紀の堆積岩類
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新第三系の上部は、主に海成の堆積岩類から構成されています。時代とともに、はじめは浅海を示す化石を多く含む砂や泥から始まり、その後石灰質のシルト岩、珪質のシルト岩・珪藻質シルト岩の卓越するより深い海の堆積物に変わっていきます。最上部は砂質シルト岩で、再び浅い海に環境が変わって最後は陸化したと考えられます。なお、下~中部には海緑石砂岩が地域のほぼ全域に渡って見られます。
- 第四紀の地形・地質
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能登は段丘地形の発達した地域です。ただし、堆積物が観察できる場所はあまりなく、主に地形に基づいて地層区分を行いました。また、特に北部地域では地すべりが非常に多いことも特徴です。
- 写真集
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1990年代のものですが、調査中に撮影した写真を掲載します。5万分の1地質図「珠洲岬,能登飯田及び宝立山」の説明書に掲載している写真のカラー版です。
- 参考資料
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5万分の1「珠洲岬,能登飯田及び宝立山」図幅のファイルダウンロードはこちらです。ぜひ次の研究に生かしてください。