宇都宮地域の地質

産総研
last updated 2023.9.22

 宇都宮地域では2005~2007年の期間に調査を行い、地質図幅は2010年に出版されました。主に後期白亜紀の火山岩類と新第三紀の火山岩・堆積岩の調査を担当しました。
 実は宇都宮地域は大学の卒論で層序の研究を行ったフィールドです。さらにさかのぼれば、幾つかの露頭は中学時代から観察していたところです。地質図幅にはこれらの成果も盛り込まれています。

5万分の1地質図「宇都宮」
5万分の1地質図「宇都宮」。画像をクリックすると、産総研地質調査総合センターのページにある5万分の1地質図「宇都宮」の高精細画像 (200 dpi) が開きます。
後期白亜紀の火山岩類

 後期白亜紀の火山岩類は、図郭の北部にある山地に分布しています。これより北西に当たる日光-足尾山地には、さらに広範に分布しており、地表ではそちらが分布の中心です。このような珪長質火山岩類は、近畿から中国地方、中部地方で広大な分布を示します。宇都宮地域の後期白亜紀火山岩類は、新第三紀の火山活動の影響で変質が進み、研究例はほとんどありません。近年、岩石学的な研究により、化学組成の特徴が報告されています (西川ほか, 2015)。

新第三紀の
火山岩・堆積岩

新第三紀の火山岩・堆積岩は、この地域の山地・丘陵地に広く分布しています。また、平野の地下にも伏在しているのがボーリングのデータからわかっています。古くから調査・研究はされていますが、都市部に近いこともあって露頭があまりないこと、岩相変化が激しいことなどから、その全容が完全に解明されているわけではありません。この地域はローム層がとても厚く、少しくらい地表を掘ったくらいでは岩盤が現れないことも、露頭の少ない一因になっています。

写真集

 調査中に撮影した写真類です。

層状チャート<br>
            数 cm単位の成層を示す層状チャートです。<br>
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            Locality : 日光市猪倉南方<br> 日向層の玄武岩<br>
            塊状の玄武岩です。ほぼ球形の気泡が少量見られます。<br>
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            Locality : 鹿沼市下武子町の黒川沿いの道路脇<br> 茗荷沢層の角礫岩 (溶結凝灰岩起源)<br>
            後期白亜紀-古第三紀の流紋岩溶結凝灰岩を起源とする単源角礫岩。<br>
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            Locality : 宇都宮市新里町栗谷北方<br> 茗荷沢層の角礫岩 (チャート起源)<br>
            ジュラ紀付加コンプレックスのチャートを起源とする単源角礫岩。<br>
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            Locality : 宇都宮市新里町栗谷北方<br> 茗荷沢層の礫岩の露頭写真<br>
            塊状で淘汰は悪く、ジュラ紀付加コンプレックスと珪長質火成岩類の円礫-亜円礫からなっています。<br>
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            Locality : 宇都宮市飯田町上飯田西方<br> 茗荷沢層のデイサイト火山礫凝灰岩の露頭写真<br>
            成層構造を呈し、基底部に円礫を含んでいます。<br>
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            Locality : 宇都宮市新里町栗谷北方<br> 茗荷沢層の安山岩溶岩の露頭写真<br>
            粗い節理の見られる塊状の安山岩です。<br>
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            Locality : 宇都宮市新里町栗谷北方<br> 茗荷沢層の砂岩中の貝化石<br>
            露頭の前の転石に見つかった印象化石です。<br>
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            Locality : 宇都宮市新里町茗荷沢<br> 横山層の凝灰質泥岩<br>
            著しいスレーキングを示します。<br>
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            Locality : 宇都宮市立伏町南部<br> 大谷層の凝灰角礫岩<br>
            発泡の悪い軽石から構成されています。<br>
            <br>
            Locality : 宇都宮市横山町の田川河床<br> 大谷層の軽石火山礫凝灰岩<br>
            火砕流堆積物上部の成層部に相当します。<br>
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            Locality : 宇都宮市関堀町の田川沿い<br> 大谷層の火山礫凝灰岩・凝灰岩互層<br>
            火山砕屑タービダイトの産状を示す互層です。<br>
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            Locality : 宇都宮市半蔵山南方の尾根<br> 大谷層の安山岩<br>
            粗い柱状節理が見られます。<br>
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            Locality : 宇都宮市多気山の多気不動尊参道脇<br> 流紋岩岩脈<br>
            母岩より風化に強いため、突出した露頭として残っています。<br>
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            Locality : 日光市猪倉南方<br> 大曽層の石灰質極細粒砂岩<br>
            大曽層下部に典型的な塊状の砂岩。ノジュールを含んでいます。<br>
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            Locality : 宇都宮市大曽二丁目<br> 大曽層の流紋岩凝灰岩-火山礫凝灰岩<br>
            大曽層には凝灰岩が挟まれています。普通は細粒ですが、この写真のものは多くの軽石を含んでいます。<br>
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            Locality : 宇都宮市八幡山公園<br> 鬼怒川の河床に露出する田之倉層の珪藻質シルト岩<br>
            2012年、2013年にこの付近でクジラの化石が発見されました。<br>
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            Locality : 宇都宮市下岡本町の鬼怒川河床<br> 田之倉層の珪藻質シルト岩<br>
            珪藻化石分析用の試料を採取した露頭です。<br>
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            Locality : 高根沢町宝積寺の鬼怒川河岸<br>

参考資料

 5万分の1「宇都宮」図幅のファイルダウンロードはこちらです。ぜひ次の研究に生かしてください。

 以下は本ページで参照した資料です。
  • 西川晃太郎・清水隆一・川野良信 (2015) 栃木県,宇都宮市北部に分布する花崗岩質岩の岩石学的研究. 地球環境研究, no. 17, 27-34.

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