三宅島ヘリ観察報告:2005年08月09日
by Isoji MIYAGI @ Geological Survey of Japan, AIST
- 観察・報告:宮城磯治(産総研・深部地質環境研究センター)
- 同乗者:気象庁の近澤さん&加藤さん
- ヘリ:警視庁のおおとり3号(ベル412)
画像のスライドショーはこちら→ Slide Show
目次 |
概要:
観察時刻:午前10時20分〜10時40分.
天候と雲:三宅島上空はほぼ晴れ.高度約1000mの風は南西約6m.
噴煙:白色噴煙は標高約1000m程度まで力なく上昇し,拡散し,島を出る頃には雲と区別ができなかった.これとは別に青白いガスが北東山麓を流下.観察時間が短かかったために噴煙の脈動の確認は認められず.
気象庁によれば火口の最高温度は178.3℃.DOASを用いたSO2放出量値は約8000トン/日で,最近にしては多目だが,風下側海上で火山ガス測定中(DOAS)に感じた火山ガスのにおいは,前回(2004年10月14日)に比べてかなり弱かった.
火口内:多数の噴気孔を有するマウンドの,噴気孔の位置などに大きな変化は認められなかった.マウンドは周囲に比べると粗粒な岩石が少ない.これは小規模な火山灰の堆積が継続しているためと思われる.
マウンド内の凹みには池ができているはずだが,今回は噴煙のため確認できなかった.マウンドが内側に崩れた断面には,硫黄と思われる黄色い物質がびっしり付着していることが確認できた.
陥没カルデラ底は比較的乾燥している模様.前回は緑色〜赤褐色の池が多数出現していたが,今回はすべて赤茶色で,面積も狭かった.
カルデラ縁では新たな顕著な崖錐の生成や崩落は認められなかったが,継続的に小規模な崩落が発生している模様.
三宅島まで
お世話になったヘリ[1] :警視庁航空隊のおおとり3号(ベル412).
離陸〜離陸直後の都内.視程はかなり悪く,雲底高度500mの雲がかかっていた.この雲を避けるためヘリクルーは高度を上げたり下げたり苦労されていた模様.
三宅島
道中,雲が多かったが,三宅島周辺は晴れ間が多かった.
カルデラ内の様子
カルデラ内が非常に良く見えた.
以下,北から時計まわりに撮影.
フィルム切れで一呼吸.村営牧場では泥流の導流堤がほぼ完成したようだ.
フィルムを交換しおわったので,再びドアオープン.
時計まわり.北西付近から.
ここまで.動画はこちら→20050809103540.mp4
山麓の様子
植生復活の具合は,樹種によってかなり異なるようだ.立枯れの下に,青々とした草木が萌える.
新島に着陸
以上で三宅島の火口観測はおわり.
予定どおり新島に着陸し,給油と休憩をする.新島空港はのんびりとしている.定期便が離陸.
火山ガス放出量の測定
今度は火山ガス放出量の測定のため,三宅島にむかう.
DOAS観測開始.[71]
DOASとは「Differential Optical Absorption Spectroscopy」の略である.測定原理は従来火山のSO2観測に用いられてきた<a href="http://staff.aist.go.jp/miyagi.iso14000/Works/Event/Miyake2000/geol/000916cospec/HomePage.html">COSPEC
とほぼ同じで,SO2による紫外線の吸光度を,火山ガスを通過した光と青空の光とで比較するというもの.DOASはCOSPECに比較して猛烈に小さい(筐体の体積で1000分の1ぐらい)ので,最近COSPECにとってかわった.小さすぎるので風で飛ばされぬよう三脚に固定.
火山ガスの真下を通過しているところ.[72]
青白くみえる.
風下に流れる火山ガス(青白い).
帰路
ガス観測終了後,ここで三宅島空港に着陸.警視庁関係者1名を乗せ,すぐ離陸.
無事東京ヘリポートに着陸.
ヘリクルーの皆様,ありがとうございました.
行程
06時00分 起床
06時30分 つくば発
08時50分 東京ヘリポート到着
09時05分 気象庁スタッフ到着
09時26分 東京ヘリポート離陸
09時45分 江ノ島付近.雲多し
10時22分 三宅島上空に到達.火口観測開始
10時40分ごろ 火口観測終了
10時49分 新島空港に着陸
12時27分 新島空港を離陸
12時40分 火山ガス放出量観測開始
13時29分 火山ガス放出量観測終了
13時37分 三宅島空港に着陸
13時40分 三宅島空港を離陸
14時43分 東京ヘリポート着陸
16時20分 つくば(産総研)着