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新型ウイルス流行の感染力と再生産数
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1. 新型ウイルスの感染力
一般に、流行や感染の様子は、微分方程式により解析的に調べることができます。新型コロナウイルスの感染についても同様だと考えられます。解析の前に現在の状況を見てみましょう。4月6日までの様子をグラフにすると下の図のようになります。
図には、アメリカ、イタリア、日本の感染者の2月19日以降の変化を示してあります。縦軸は感染者数であり、対数目盛り
で示してあり、横軸は日数を単位にした時間の経過です。これから、イタリアの感染者数の増加はほぼ収まりつつということがわかります。グラフが横に寝てきています。アメリカは、3月中旬に爆発的な増加がありましたが、その頃に比べると増加の仕方はゆるくなってきました。日本は、3月下旬頃から急な増加に転じ始めました。高輪ゲートウェイ駅の新規開業に4万人、外国人によるウイルスの流入、日本人旅行者の海外からの帰国、各種イベントの開催など、引き金となり得ることが続きました。
図1. 感染者数の振る舞い。縦軸は対数で表示してあります。横軸tは日数を表しています。
日本の感染者数は、3月中旬までは緩やかに増えていましたが、その後増加率が変化し、3月下旬から対数目盛りでほぼ直線により近似できるようになりました。すなわち指数関数的に増大しています。この指数関数的振る舞いから、2倍になるまで増加するのに要する日数を求めたものが、図においてTにより示したものです。日本はおよそ
T = 6.6 日
であり、一週間弱で2倍となっています。アメリカは、一番増加率が高かった時は、T = 1.6日でしたが、その後長くなってきました。日本も、この倍周期Tをいかに長くするかが課題です。現在の状況がそのまま続くとすると、一ヶ月後例えば5月6日に対応する日数を変数(t)に代入すると、約8万人という答えが返ってきます。アメリカについても同様にすると、恐ろしい数字が出てきますが、アメリカの場合は倍周期Tが長くなるモードに入っていますので、改善されていくと思われます。
なお、指数関数でフィットする際には、感染者数をf(t)とすると
f(t) = ceat
の形の関数を使っています。aとcが定数であり、データに合うように決めます。定数aは倍周期Tと、T = (ln2)/a の関係にあり、aが小さくなっていくと良いことになります。
図2. 係数aの振る舞い。横軸tは日数を表しています。
係数aの時間変化を調べてみましょう。4月6日から10日が過ぎた16日までのデータを図2に示します。
イタリアとアメリカは減少しています。イタリアはaが0.02まで減少しています。
0.022は一つの目安であり、これより小さくなると、倍周期Tが一か月より長くなります。日本にとって良い情報は、4月12日から係数aが減少する傾向を示し始めていることです。外出自粛の効果が現れたのかもしれません。単調に減少するようになると良いです。
また、日本のデータとしては、厚生労働省発表のもの(MHLW)と、メディアにより発表されているもの(ASA、NNN)を用いました。厚生労働省のデータは12:00付の文書で発表されますが、メディアでは24:00付で集計していると考えられ、集計数に半日のズレがあります。
係数aを感染係数を呼ぶことにしましょう。4月6日から2週間がすぎた4月20日までの様子を図3に示します。一時期、世界同時的に減少が止まっていましたが、その後は減少する傾向が続いています。日本の感染係数aはアメリカに近づいています。4月6日に5月6日の感染者数を予想した時、約8万人となりましたしたが、4月20日のデータをもとに5月6日を予想すると、約1.9万人となり改善されてきています。
図3. 4月20日までの係数aの振る舞い。横軸tは日数を表しています。
4月20日から一週間がすぎての係数aは図4に示すようになっています。参考までに、イギリスも含めました。振動を繰り返していますが、減少傾向を示しています。この図から、ヨーロッパ諸国、アメリカ、日本は同様な減少のモードに入っていることがわかります。
図4. 係数aの振る舞い。横軸tは日数を表しています。
感染者数の変化を図5に示します。ヨーロッパには感染者数の増大が著しい国が多いですが、日本と同様の変化を示している国もあります。スウェーデンがそのような国の一つであり、図5に加えました。感染者数の増加に関して、二つのパターンがあるようです。一つはイタリア、スペイン、イギリス、アメリカなどの型、もう一つは日本、スウェーデンの型です。このまま行きますと、日本やスウェーデンは爆発的感染を避けることができそうです。この違いの原因が何かはよくわかりません。
しかしながら、日本とイタリア、イギリス、スウェーデンとを比べると感染曲線に一つの違いがあります。それは、イタリアやイギリスは上に凸な一つの曲線(対数目盛りのグラフにおいて)によりほぼ表現できますが、日本は3月中旬までに一回収まりかけながら3月下旬から再度の指数関数的増大が始まったという点です。どうしてこのような振る舞いを示すのか考えて見ましょう。日本のデータには二つのピークがありますので、より厳密にやろうとすると複数の指数関数が必要となります。すなわち、二つの係数を導入するのが合理的です。二つの係数は起源が別であると考えることもできます。これは、3月以降に新たに外部(外国)からウイルスが流入して、それが係数aを増大させる起源になったことを示唆しています。実際、国立感染症研究所によると、3月下旬からの流行はそれ以前とは異なる変異種の流行であることが示されています。日本では第二波が起こり、それがお染まりつつあるということです。第三波を起こさないためには、外国からのウイルス流入を阻止することが必要であることを示しています。現在までの係数aの変化を図6に示します。日本はイタリアと同じレベルにあります。
図5. 2月19日から4月27日までの感染者数の変化。横軸tは日数を表しています。
図6. 5月8日までの係数aの振る舞い。横軸tは日数を表しています。
2. 基本再生産数
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