フィンランド出張報告: 2003.03.17

by Isoji MIYAGI @ Geological Survey of Japan, AIST

フィンランド出張報告2003

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写真・文:宮城磯治 (産総研・国際部門・国際地質協力室)※
出張者:笹田政克&宮城磯治
作成日:平成15年4月22日(火)
修正日:平成16年6月16日(水)
デザイン変更:2008年2月4日月曜日


※産業技術総合研究所→活断層・火山研究部門→マグマ活動研究グループ:主任研究員

1日目 GTK(フィンランド地質調査所)


目次

概要

3月17日(月曜日)

PM GTK(エスポー)を訪問

  • presentation of the Geological Survey of Finland
  • program in Japan
  • program in Finland


得られた資料

  • R&D Geological Survey of Finland, by Gabor Gaa'l, 2003, -.
    ※Gaa'l氏によるプレゼンテーションのハンドアウト.12画面.
  • Nuclear Energy in Finland. by Energy Department. 2002, -.
    ※ フィンランド通産省エネルギー課によるパンフレット. 24ページ.英語.VTTでもらったものと同じ.
  • Geology of Olkiluoto, by Seppo Paulma:ki, 2003, -.
    ※ パラマキ氏によるプレゼンテーションのハンドアウト. 24画面.
  • Nuclear waste and environmental geology, by Seppo Paulma:ki, 2003, -.
    ※ パラマキ氏によるプレゼンテーションのハンドアウト. 11画面.
  • Nuclear waste management in Finland/ Final report of public sector's research programme JYT 2001 (1997-2001), by Kari Rashilainen (Editor), 2002, Ministry of Trade and Industry Finland/ Studies and Reports 15/2002.
    ※ フィンランド通産省エネルギー課のまとめたものである. 258ページ.英語.VTTでいただいたものと同じである.
  • The palmottu natural analogue project/ Phase II: Transport of radionuclides in a natural flow system at Palmottu. by R. Blomqvist et al., 2000, EUR 19611 Nuclear science and technology series, ISBN 92-828-0614-6.
    ※ EUによる国際的な研究プロジェクトである.英語.174ページ.
  • The Palmottu natural analogue project/ summary report 1996-1999. by Juha Kaija et al., 2000, GTK Nuclear Waste Disposal Research Report YST-102.
    ※ GTKによる研究報告書.英語.92ページ.
  • Publication activities of the Geological Survey of Finland in 1991 and 1992. by Caj Kortman, 1993, Geological Survey of Finland Special Paper 18 147-186.
    ※ GTK職員による論文や出版物がリストアップされている.英語.
  • Focused modelling of bedrock fracture zones in Olkiluoto, by Jarkko Jokinen and Kai Jakobsson, 2002, GTK Report YST-111.
    ※ 24ページ,英語.STUKでもらったものと同じ.
  • Exploring the Earth. by GTK, -, -.
    ※ GTKのパンフレット.18ページ.英語.
  • Annual report 2001, by Geological Survey of Finland GTK, 2001, -.
    ※ GTKの年次報告書.59ページ.英語.
  • How to find us: Geological Survey of Finland (GSF), by GTK, -, -.
    ※来訪者のための,GTK周辺の鳥瞰図.A4両面.英語のフィンランド語.
  • フィンランドの地質概略図(1:5,000,000)プリントアウト.A4片面.
  • 地質図等.1:100,000基盤地質図の区割り,1:100,000第四紀地質図の区割り, 1:20,000と1:50,000の第四紀地質図の区割り,オルキルオト周辺の地質図,
    ※それぞれA4片面のプリントアウト.


GTKまで

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左: 8:00頃起床.宮城はヨーロッパ旅行は初体験.心配していた時差ぼけ感はなし.

中: ドアノブにかける「don't disturb me」札.わかりやすいイラストでできており,関心した.

右: ヘルシンキ市内.外灯は基本的にみな両脇の建物から延びるロープに釣られており,独特の雰囲気がある.

12:50頃,ホテルの前にGTKのスタッフがむかえにきてくれた.

GTKとはフィンランドの地質調査所のこと.Geologian tutkimuskesusの略で,現地では「ゲーテーコー」と発音される.フィンランド語を直訳すると,Geologian (地質の) tutukimus (研究) keskus (センター) の意味になり,産総研の「地質調査総合センター」を連想させるが,同所による公式の英訳はGeological Survey of Finlandである.

※参考:GTKのホームページはこちら

迎えにきてくれたのは,出国前宮城が何度もemailをやりとりしてきたPaavo Vuorelaさんと,この時点では名前不明(自己紹介してくれたがききとれず)の方.名前わからない方がボルボのセダンを運転.この車も,周囲も,ほとんどの車はスパイクタイヤを履いている.道路は石畳か,コンクリートでできており,雪はないので,スパイクが路面をけずる.市街地も含め,路肩の雪は灰色〜黒.春先に天気が良いと粉塵が舞うとのこと.

GTKの研究概要

13:15頃,GTKに到着.まずGaalさんがGTKの研究内容の概要説明.Gaal(Gabor Gaal)さんの肩書はResearch Director.Vuorela (Paavo Vuorela) さんの肩書は,Manager, Nuclear Waste and Environmental Geology.途中でDirector General (所長) の Raimo Matikainen さんが合流.

GTKはフィンランドの通産省の傘下にある研究機関である.GTKの年間予算は40ミリオンユーロで,そのうち9ミリオンユーロが通産以外から調達されている.GTKの外部予算としては,高レベル放射性廃棄物をあつかうPosiva社からの研究委託費や,タンザニアやモザンビークの地質調査などが含まれる.GTKは,放射性廃棄物の地層処分に関しては,業務実施側と規制側という二つの椅子に座っていることになる(笹田&宮城が所属する深部地質環境研究センター は規制側の研究機関である).

GTKの研究員は780人(徐々に減少中).職員の定年は63〜65歳の間に段階的に行なわれる.63歳になったら辞めてもいい,65歳には辞めなければならない.GTK国内の拠点は3つで,A:spoo(フィンランド南部),Kuopio(中部),Rovaniemi(北部).GTKの業務は3つあり,それらは,mapping(地質調査),R&D(研究・開発),consulting(いわゆるコンサルタント業務)である.地質調査業務には,Hard Rock & Raw materials (花崗岩/変成岩の調査,氷河堆積物(建材などとしての利用)の調査)がある.コンサルタント業務には,Land use(土地利用法),がある.EUから委託された研究が,7プロジェクトはしっている.その中に,タンザニアやモザンビークの地質調査などが含まれる.ここまでが,Gabor Gaa`l氏による説明.

地層処分の概略

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14:30頃から,Vuorelaさんが地層処分関する解説を開始.


まずフィンランドの原発を紹介.フィンランドには「オルキルオト」と「ロビーサ」に原発がある.ロビーサの場所はフィンランド南東部で,ソ連の技術が使われてい る.

次に,放射性廃棄物地層処分の候補地選びの基準が紹介された.地形が平坦であることも重要(∵地下水の動きが単純化される).フィンランドの基盤岩も変動している.その動きの少ない場所が選ばれる.基盤が動く原因は,氷河の消滅による加重の除去(上昇)と,大西洋の拡大による東西の広域的な圧縮によるもの.

廃棄物を埋める深度は,作業服など低〜中レベル放射性廃棄物が60m.使用済燃料など高レベル放射性廃棄物が500m.

日本の紹介

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14時55分から,笹田氏によるプレゼンテーション.


まずは産総研と,地調の紹介.深部センター,活断層,地球科学情報,,,と,産総研パンフにそって紹介.次に日本の電力事情を紹介.地熱発電のしめる割合が1パーセントときいて,先方は驚きのリアクションをした(少ないため?かどうかは不明).笹田氏は,我々日本の研究はフィンランドに比べて20年遅れている,とプレゼンテーションをしめくくった.

Vuorela氏は,放射性廃棄物の地層処分は単純な研究でない,とコメント.というのは,研究の初期段階は純粋な「サイエンス」でよいが,計画の後半は市民への情報発信がかなりのウエイトを締めるという.日本は基盤岩が不安定だという地質学的なハンデに加え,90年代におきた二件の原発事故のために市民の目がきびしく,二重に大変だ,お察っしします,,と.

Q フィンランドにも,原発や放射性廃棄物の研究等を監視するNGOがいるのか(答えは,たとえばポシバ社は非政府組織だよ(質問の仕方が悪く,Vuorela氏は意味を理解できなかった)).※翌日もういちど.昨日私が聞きたかった事は,フィンランドに「グリーンピース」のような環境保全に関心のある非営利団体がいるかどうかだった(答えは,フィンランドには「グリーン党」という政治団体がいて,監視している.フィンランドの市民運動は,新規の原子力発電所の建設に対しては否定的だが,放射性廃棄物の地層処分については肯定的である).

帰路

16時ごろ,GTKをあとにする.今朝迎えてくれた人が,送りかえしてくれた.同じ地質調査所としての親近感もあるだろうが,彼らのホスピタビリティーに感動した.

帰路,こちらが英語で話しかけるが,ときどき通じなくなる.するとその人は,「僕は英語が苦手なんです,すみません」とあやまる始末だった.フィンランド語は日本語とおなじぐらい孤立した言語だから,ハンデを感じているのかもしれない.とはいえ,フィンランドでは日本よりずっと英語が通じる,,.

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