
第46回
選別工程決定の段取り ①
~単体分離と選別の理論限界1~
単体分離と選別の理論限界1
選別工程の最適化を考えるとき、多くの場合、選別後の産物を高価売却できるようにすることが目的となるので、まずは、「回収産物の品位(純度)」と「忌避物質の除去」が目標となる。これまで述べてきたように、選別は、選別装置の最適化だけでは高度化できず、粒子の状態、特に単体分離の状態よって高度化の上限が決まってしまう。単体分離が不良であれば、いかなる選別手段を駆使しても、目標純度の産物を得ることが理論的に不可能となる場合もある。今回から数回にわたり、これまで述べた技術要素を振り返りながら、選別工程の決定のために実施すべき段取りという観点で述べる。
第28回でも述べたように、選別前に対象物のキャラクタリゼーションを行うことが重要である。このときのサンプリングの仕方については第39回を参照されたい。キャラクタリゼーションにおいて特に重要なのが、第12回~22回で述べてきた単体分離の把握である。単体分離度とは下記で求められる指標であるが、実際には、面積率等で代表してしまうことも少なくない。また、単体分離度を利用したより複雑な計算をする場合などでは、「✕100」を省略し、1を最大とした少数で扱っても良い。
$$ \text{単体分離度(%)} = \frac{\text{単体分離した粒子の重量}}{\text{全粒子の重量}} \times 100 $$
第13回でも述べたように、単体分離度を正確に分析する方法がないため、現状は目視や光学顕微鏡、電子顕微鏡などで、見ることが可能な面の状態から全体を推定するしかない。分析精度自体の問題もあるため、単体分離粒子と認識されても、着目成分の純度が100%であることは保証されない。このことから、着目成分の割合が概ね95%以上と推定される粒子を、単体分離粒子と扱うことが多い。すなわち、このような分析で認識した「単体分離粒子」だけを回収しても、回収産物の着目成分純度は必ずしも100%とはならないが、ここでは便宜上、これを「概100%」と表記する。ただし、対象物によっては例外もある。対象となる多種混合物に元々単体分離している塊が含まれており、これらを破砕した場合には、汚れや付着物の懸念は残されるものの、回収産物の純度は限りなく100%近くになり得る。このように適切な状況判断をして、単体分離分析における結果の推定確度を向上させることが肝要である。
また、単体分離度には、着目対象に応じて2種類の基準が存在する。1つは「粒子全体の単体分離度」、もう1つは構成される「成分ごとの単体分離度」である。選別工程の最適化を図る場合には、図7.1.1の①で示した「粒子全体の単体分離度」より、②で示した「成分ごとの単体分離度」を知ることの方が有用である。①では、全粒子の37.2%が単体分離していることしかわからず、対象物全体の単体分離の傾向を掴むことしかできない。一方、②では、回収対象がA成分の場合、単体分離したA成分粒子だけを回収すれば、理論上、A成分回収率が最大で51.6%まで、概100%の純度で回収することができる。また、この回収産物のB成分回収率は0%となるので、分離効率は51.6%となる(第20回参照)。ちなみに、この分離効率は、概100%の純度の産物を最大の回収率で選別した場合の値であり、この対象物で取り得る分離効率の最大値ではない。回収対象がC成分の場合には、概100%が達成可能な最大回収率は27.2%となり、選別試験をするまでもなく、回収率27.3%以上とすることは理論的に不可能であることが分かる。このような理論上の選別を実際に行うことは難しいが、②の単体分離の分析をすれば、選別の理論限界の1つを知ることができる。
図7.1.1 単体分離度の対象
ここでは、選別の理論限界の一例を示したが、優先する項目に応じて、理論限界とよばれるものは複数存在する。例えば、a: 最高純度を維持した上での最大回収率(上述の例)、b:任意の目的純度を維持した上での最大回収率、c:最大分離効率などである。単体分離の分析の過程で片刃分布の情報は知り得るが、aの選別の理論限界は、片刃分布を算出しなくとも、単体分離度だけで容易に計算できる。研究機関においては、選別精度を一般化するために、専ら分離効率(完全分離の割合)を最大化するcが用いられるが、リサイクルの現場においては、aまたはbが選別工程の決定に向けて有用な理論限界指標となるであろう。


