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大木研究室

大木達也が提唱する「戦略的都市鉱山」と「トランソーティクス」

大木達也が提唱する「戦略的都市鉱山」と、
「トランソーティクス」

■ 戦略的都市鉱山

  我が国は素材資源の大部分を海外からの輸入に依存しており、そこから高度な材料、部品、製品を生産することが産業の柱となっています。近年は国際的にも資源循環思想が台頭しており、使用済み製品を構成する素材は「都市鉱山」として着目されてきました。日本のものづくり産業へ、素材資源を安定供給するという継続的課題や、将来的な天然鉱山の低品位化、循環型社会の促進など、長期的観点から、都市鉱山の開発は今後ますます重要な課題となっています。
  しかし、廃製品が発生した後に対応する従来のPassiveな都市鉱山では、資源再生の効率化に限界があります。廃製品から高純度再生原料に至る壮大なエントロピーの縮小を、動-静脈産業が一体となって、Activeかつ計画的に合理化する次世代の都市鉱山を「戦略的都市鉱山研究拠点」として提唱しています。2013年には、産総研内に「戦略的都市鉱山開発拠点 (Strategic Urban mining REsearch base:SURE )」を設置、翌2014年には官民連携組織「SUREコンソーシアム」を設立しました。 SUREコンソーシアムでは、産総研と動脈産業・静脈産業の企業、業界団体、政府機関等と連携して、

  1. 市場競争力のある都市鉱山確立による我が国の資源循環率(自給率)の向上
  2. リサイクル産業の技術力向上に伴う都市鉱山市場の拡大
  3. 我が国のリサイクル装置産業の成長とリサイクルプラントの国産化

など、我が国における「戦略的都市鉱山研究拠点」の早期社会導入を目指しております。これまで、来るべき資源循環社会に向けた未来展望に係る議論を重ねてまいりましたが、新たに「状況分析から実践へ」というスローガンを掲げ、高度な資源循環技術の社会実装を加速させてまいります。

■ トランソーティクス

  上述した「戦略的都市鉱山研究拠点」を支えるためには、これまでにない高度な選別技術が必要となります。しかしながら、世界の選別技術のベースは第二次大戦期に構築された資源処理技術であり、その後は、検討事例が蓄積されるだけで、選別技術自体、抜本的な革新はほとんどなされていません。それに加え、リサイクルにおける選別技術では、他産業にはない特殊な機能が求められます。
  多くの製造業で利用される選別技術では、a:厳選された原料が選別対象、b:ゆえに選別対象の組成が概ね一定、c:かつ、選別対象の組成は概ね認識できた上で選別を実施など、管理された粒子群が選別対象となります。一方、リサイクルにおける選別対象、例えば、廃小型家電をイメージすると、A:多種混在しているため各々の目的金属の濃度が薄い、B:選別対象の組成変動が大きい、C:そもそも選別対象の組成が不明なまま選別がなされる、という点が他産業利用の場合とは大きく異なります。
  このようにリサイクル工場では、選別技術自体の革新もない中、上述A~Cのより過酷な条件を強いられるため、令和時代においても多くの手作業を必要としています。言い換えれば、戦略的都市鉱山研究拠点を実現するには、変動する対象物の組成がほぼ不明なまま、膨大なエントロピーの縮小を低コスト、省エネルギーに達成することが可能な選別技術が求められます。このような状況下で高純度な再生原料を生み出すことは、他産業用途の選別概念では実現できず、選別の本質を追求した、「従来の選別」とは異なる新たな選別概念・選別理論の構築が必要となります。
  「トランソーティクス」は、上述したような過酷な選別要件を克服して「戦略都市鉱山」「高度なリサイクル」を実現するため、選別理論を整理し、情報の少ない対象物に対しても最適な選別条件を絞り込む、新たに構築している選別技術論です。未だ構築の過程にありますが、そのコンセプトは少しずつ、コラム「真・物理選別学」に連載しております。また、2026年度には、SUREコンソーシアム内に、「つくばトランソーティクス・カレッジ」を開講し、 「トランソーティクス」に精通した、未来の選別技術者・研究者の育成に向けた活動を開始いたしました。我が国の多くの技術者・研究者が、トランソーティクスの技術概念を理解することで、「戦略的都市鉱山研究拠点」の社会導入が加速されることが期待されます。

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