
第47回
選別工程決定の段取り ②
~単体分離と選別の理論限界2~
単体分離と選別の理論限界2
前回、選別前に対象物のキャラクタリゼーションを行うことが重要であり、中でも重要なのが単体分離の把握であること。単体分離度には、着目対象に応じて「粒子全体の単体分離度」と「成分ごとの単体分離度」があり、選別工程の最適化を図る場合には後者が有用であること。単体分離情報から得られる選別の理論限界は、優先する項目に応じて複数存在することなどを述べた。代表的な理論限界のうち、前回は「a: 最高純度を維持した上での最大回収率」について述べたが、今回は選別工程決定の段取りで重要と考えられるもう1つの理論限界「b:任意の純度を維持した上での最大回収率」について述べる。
例えば、成分A、B、C…が混在する粒子群に対して、Aを高純度で選別・回収しようとするとき、上述の「a」なる限界を目指した選別を実施すると、理論上の最高純度(概100%)の産物が得られる。しかし、片刃粒子として存在するA成分は、すべて選別・除去することになるので、A成分の回収率は低下してしまう。多くの場合、純度は、素材メーカ(製錬業など)に売却可能な下限まで落としても、回収率を高める方が得策である。売却可能な下限純度は、素材種や素材メーカの買取グレードなどによって様々であるので、どの純度であればいくらで売却できるのかなどを吟味して、素材種に応じて設定することになる。設定された純度をここでは「任意の純度」と呼ぶことにする。任意の純度を維持した上での最大回収率となる条件が「b」の理論限界ということになる。これを単体分離分析の結果から知るには、片刃分布を算出することが必要となる。例えば、図7.1.1で示した粒子群の「C成分の片刃分布」が図7.2.1のようであったとする。MLA等の装置を用いれば、連続分布(曲線)として表示可能であるが、ここでは簡単のために旧来から用いられるヒストグラムで示す。図中の「C成分の片刃率」は、各粒子のC成分の純度を意味する。横軸100%における「存在割合」(12.2%)は、粒子群全体に対する単体分離したC成分の割合であり、「C成分全体に対するこの割合」が、C成分の単体分離度(27.2%)となる。一方、横軸0%はC成分が全く含まれない粒子(A成分,B成分の単体分離粒子およびA成分とB成分の片刃粒子)である。前回、Cの単体分離粒子(横軸100%)のみを回収した場合には、回収産物は達成可能な最大純度(概100%)となるが、回収率の理論限界は27.2%に留まることを示した。これは言うまでもなく、残りの72.8%が片刃粒子(横軸10%~90%)として存在しているためである。
図7.2.1 C成分の片刃分布の一例
ここで、MLAのような単体分離分析を行うと、1粒子ずつの片刃率が測定されるため、例えばC成分の片刃率の高い粒子から順に回収したときの純度(積算の産物純度)を求めることができる。図7.2.1に基づく表示例を図7.2.2に示す。図の縦軸は上述の純度、横軸は片刃率100%(単体分離粒子)から任意の片刃率の粒子までを回収した産物のC 成分全体に対する存在割合であり、選別したときの「回収率の理論限界」を意味する。例示のケースにおいて単体分離粒子だけを回収し、概100%の純度を目指したときには、前回に示したように、回収率の理論限界は約27%に留まるが、例えば、目標純度を90%まで落とすことで、回収率の理論限界は約67%まで改善する。さらに、目標純度を80%まで落とせば、回収率の理論限界は約90%まで向上させることができる。物理選別では、純度と回収率は少なからず負の相関を有する。特に、片刃粒子を多く含む粒子群を選別する際には、闇雲に高純度化を目指すと、選別の精度に関わらず、粒子側の制約によって回収率の理論限界が低下してしまうので、目的に応じた純度設定をすることが重要となる。
図7.2.2 C成分の片刃分布に基づく任意純度における回収率の理論限界


