
第45回
バルク選別の不確実性 ⑤
~自動・自律制御に必要な情報~
自動・自律制御に必要な情報
第41回~第44回まで、バルク選別における「不確実性」の因子について述べてきた。この不確実性とは、その情報の把握を含め、技術的に最適化が難しく、事実上制御困難である事象であった。一方、技術的には把握可能である情報でも、その把握にコストや時間を要する事象は、現実的には不明なままに選別されることが多い。今回は、これまで述べてきた不確実性を含め、自動・自律制御に必要となる情報の関係性についてまとめてみる。
図6.5.1は、カオス様の対象物に対して選別を自動・自律制御し、水平リサイクルに向けた高純度再生原料を得る場合に、必要となる情報の関係性を簡単にまとめたものである。情報の対象を、「対象物(入荷物)」「選別装置」「回収物(出荷物)」に分けたとき、これまで述べてきた「不確実性」とは、図の対象物の「制御困難物性」と、選別装置の「制御困難特性」の部分となる。現状は、ほぼ不明なままとなるが、将来的な把握の可能性については第42回、第43回で述べてきた通りである。また、対象物の「選別基準物性」は、選別対象が単一種に限定されれば、その把握は比較的容易である。カオス様の対象物もコストと時間をかければ技術的(理論的)には把握可能だが、現実的とはいえず、事実上、ほぼ不明なまま選別がなされる。対象物の「元素組成」も分析自体は可能だが、カオス様の対象の場合はその傾向を把握する程度で、ロットごとに詳細分析をするようなことは、やはりコスト的に困難と言える。
図6.5.1 自動・自律制御に必要となる情報
一方、選別装置の「選別基準物性」も、第44回で述べたように比較的選別基準が明確な「篩分け」でさえ、その基準には曖昧さがあり、他の選別装置では、結果として得られる回収物に認知できない境界条件が存在するだけで、選別基準(比重、磁化率、導電率)自体は不明なままのことが多い。さらに、回収物の「素材産業受入基準」も、すでに流通している素材では明確な場合もあるが、レアメタルやプラスチックなど水平リサイクルのための受入れルートが確立されていない物は、明確でないことが多い。ただし、これについては、技術やコストの問題というより、素材産業側の受入意欲の問題でもある。これが不明なままだと、そもそも選別工場から何を出荷すべきかがわからないので、是非、明確化して頂くことが望まれる。
現状の選別工程においては、図中のほぼすべての情報が認知できない中で、一律に動作する既存の機械選別工程に投入し、不足分は人の判断による試行錯誤に頼ることになる。将来において、選別工程の自動・自律化により省人化を果たすには、端的に言えば、これらの情報をできるだけ把握できるようにならなければならない。筆者らは、高品位小型家電6品目(約2000品種)を対象に、全ての選別工程を無人化したCEDESTシステムを開発し、情報さえ整えば、自律制御によって高純度再生原料を生み出すことが可能であることを証明した。これは対象物を限定した上、経験則の数値化と、曖昧さを極力排除した構造を持つ装置開発など、多くの労力を費やしてきた結果として生まれた技術である。メーカ自ら自社製品をリサイクルする場合など、製品情報の入手が容易な場合を除き、カオス様の対象物を選別しようとすると、分析すれば分かる「対象物」の情報ですら、コストの関係で把握できない状況は続くであろう。今後、これらの情報を如何に簡便に獲得するかが課題となる。
一方、筆者らは、もう1つの解決策として、「対象物」や「選別装置」に関する詳細な情報は不明なままでも、自動・自律的に高度選別できる新たな選別概念を構築中である。現在、国のプロジェクトで検討中であるので、記述は避けるが、将来的にはその方法論についても述べたいと思う。


