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大木研究室
第12回

まずは単体分離させる

これまで、本コラムでは、真・物理選別学(TRANSortics)の概念、意義や、それを通じて発展が期待できる戦略的都市鉱山の目指す方向性などを述べてきた。ここからはしばらく、趣向を変えて、真・物理選別学が担う技術の中身について述べていきたいと思う。必ずしも歯切れのよい解説にはならないこともあろうが、第2回で記したように、本コラムは現在の物理選別に対する筆者の疑念を、読者に共有してもらうことが目的であることをご理解いただきたい。

まず、第3回で示した「物理選別プロセスの基本的な流れ(図 1.1.1)」を思い出してほしい。種々雑多に混在した混合粒子群から、高純度原料を得るまでの基本的なプロセスを示したものである。リサイクル工場で扱う対象の出発点は、ほとんどが、多成分が混在した複合粒子(片刃粒子)群である。片刃というのも不思議な言葉だが、古くから使われている鉱山用語であり、英語ではlockedである。あくまで推定であるが、日本語の語源は両刃でなく片方だけ刃がある、英語の語源は複数成分がロックされたという意味と思われ、いずれも不完全な状態を意図したものであろう。また、粒子というとピンと来ないかもしれないが、独立した固体を粒子と呼ぶので、例えば1台のスマートフォンも1粒子である。物理選別は文字通り、粒子を選り別ける操作であるので、このような片刃粒子のままでは、各種金属・素材別の高純度原料とすることができない。まずは、1 粒子が1成分で構成されるように、粒子を細分化する必要がある。このように複合粒子を細分化して、単成分で構成する粒子にすることを「単体分離」という。分離といっても選別するという意味でなく、細分化によって単離することで、英語ではliberationである。ロックされていた複数成分が、単成分に解放されたということであろう。単体分離していなければ、その後にいかに優れた選別機を駆使しても、高純度原料を得ることはできない。物理選別プロセスの最初に行う工程であるとともに、最も重要な役目を担っているといっても過言ではない。

図2.1.1に簡単な概念図を示した。

図2.1.1 片刃粒子と単体分離粒子

上段・左に示すような、銅・アルミ・プラスチックからなる片刃粒子が、粉砕などの細分化により、上段・右に示すような、銅粒子、アルミ粒子、プラスチック粒子にすることを単体分離といい、これらの粒子を単体分離粒子と呼ぶ。リサイクル工程でこのように理想的な単体分離が実現することはほとんどなく、多くは不完全な状態となる。例えば、下段・右のような状態では、アルミは(すべて)単体分離しているが、銅とプラスチックは一部しか単体分離していない。これら粒子群全体の傾向として、「良好に単体分離している」「単体分離が不十分」などと言うことはあるが、厳密にいえば、「何が」「どの程度」単体分離しているのかを示す必要がある。この場合、アルミは単体分離しているので、精度よく選別できる条件が整っているが、銅やプラスチックは単体分離が不十分であり、これらを個別に選別することを考えると、回収産物の純度や回収率(のいずれか、あるいは両者)の低下は避けられないと解釈できる。

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