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大木研究室
第11回

真・物理選別学が想定する範囲 ③

 

~リサイクルの高度化を定義してみる~

リサイクルの高度化を定義してみる

廃棄物の減量化という視点でみれば、何らかの形で再び利用されれば「リサイクル」となる。3R(リデュース、リユース、リサイクル)の促進においても、「リサイクル」はその内容によらず1つのカテゴリーである。一方、都市鉱山の概念の普及から、リサイクルされた物の利用のされ方によって、水平リサイクルとカスケードリサイクルという分類がなされるようになってきた。2010年頃に起きたレアメタルの高騰や供給不安を解消するには、天然資源と同等に利用可能な水平リサイクルを促進する必要がでてきたためである。しかし、選別対象の廃製品の種類と、回収対象の素材(各種金属等)の組み合わせは無限にあり、リサイクルの初めの工程である物理選別だけを取り上げても、その高度化は一朝一夕には進まない。天然資源と同等の水平リサイクルと、低級利用のカスケードリサイクルという2つの分類しかなければ、一歩一歩の前進や、どちらのリサイクルが高度かなどが不明瞭になりやすい。無限の組み合わせに共通して使えるベンチマークが生まれるのが理想だが、例えばエントロピーという指標も、第6回で述べたように感覚的なものであり、共通指標として数値化することは難しい。以上のことから、リサイクルの進歩性をもう少し細かく示すため、筆者はその高度化の分類を試みた。数値化できていない、科学的根拠に乏しいなど、完成度は不十分であることは承知の上で、まずは、その考え方について説明したいと思う(図1.3.4)。

図1.3.4 リサイクルの高度さを定義してみる  (図をクリックすると拡大版がご覧いただけます)

まず、水平リサイクルと呼べるには、少なくとも天然資源と同等の原料として扱うことができ、同等の製品を作ることができなければならない。電子基板から金の地金を作るなどがその代表例で、これを1G(1st grade recycling)とした。一方、廃アルミ缶から再びアルミ缶として利用するように、天然資源から製造する高機能素材として再び利用することができれば、それを作り出すためのコストやエネルギーが省けるため、理想的なリサイクル方法と言える。これをUG(Up grade recycling)とした。そして、UGまたは1Gができれば、完全に天然資源の置き換えが可能となるので、資源の循環利用(資源循環)がなされたといえる。

一方、現状、その多くがカスケードリサイクルであることを踏まえれば、1G、UGと見なせるものは、ほんの一握りしかない。これらを単にカスケードリサイクルとしてしまうと、水平リサイクルに至る過程の高度化が示せないことになる。そこでカスケードリサイクルをさらに3つに分類することを試みた。まずは、グレードは下がるものの、元の素材と同種の原料として再利用する場合を2G(2nd grade recycling)とした。廃アルミ展伸材をアルミ鋳造材として利用したり、オフィス古紙をトイレットペーパにしたりするのがこれに該当する。次に、本来持つ機能とは無関係な機能を利用した、異種原料として再利用する場合であり、これを3G(3nd grade recycling)とした。焼却灰をセメント原料にしたり、廃プラスチックをコークス代替として利用するなどがそれにあたる。最後は、製錬スラグを路盤材に利用するなど、元の原料特性は利用せず、無害化しつつ、体積利用に留まるような場合で、これを4G(4th grade recycling)とした。このようにカスケードリサイクルを何段階かに分けることにより、開発目標や、技術開発でもたらされるリサイクルの高度化、進歩の度合いを、より細かく表現することができると考える。

これまで、すべてのリサイクルを「資源循環」と称する例も散見されるが、これら2G~4Gのカスケードリサイクルは、天然資源から製造される元の原料の代替にはならず、また、多くは2巡、3巡させることもできない。このことから、これらは「資源循環」でなく、「社会吸収」と呼ぶべきものと筆者は考えている。戦略的都市鉱山は、あくまで、UG、1Gの水平リサイクルの促進を目指すものであるが、コスト面や素材そのものの劣化などから、すべてを水平リサイクルさせることは必ずしも合理的でない。だからといって、低級のカスケードリサイクルに甘んじてよいということではなく、より上位のカスケードリサイクルを目指すためにも、真・物理選別学がもたらす技術が活用されることが望まれる。

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