研究概要

障害物知覚を獲得した人は、壁の存在によって起る音の変化だけを手がかりに壁の存在を知覚することができます。この性質を利用すると、音の変化を人工的に再現することにより、障害物知覚獲得者に音だけであたかも本物の壁があるかのように感じさせることができます。(図1

図1は、円環状に並べたスピーカによって物体による音の変化を再現している図です。障害物知覚獲得者は音だけであたかも壁があるかのように感じてしまいます。次の行は図のタイトルです。
図1 音響装置によって壁による音の変化を人工的に再現

私達は、この音によって作り出された壁をゆっくり近付けたり遠ざけたりすると、障害物知覚獲得者の体が壁の動きに同期して無意識に揺れることを発見しました。私達はこの現象を聴覚性運動(auditory kinesthesisと名付けました。(図2

図2は、聴覚性運動の様子を表わした図です。壁の動きに合わせて体が前後に揺れている様子が描かれています。次の行は図のタイトルです。
図2 聴覚性運動(auditory kinesthesis)の様子

聴覚性運動は、障害物知覚獲得者にしか見られません。何故なら、障害物知覚を獲得していない人は、音によって壁の存在を知覚できないため、壁が動いている様子が分からないからです。(図3

図3は、獲得者の体は壁の動きに同期して動いているのに、非獲得者は動いていないことを表わしたグラフです。次の行は図のタイトルです。
図3 壁の動き(上)に対する体の揺れ(下)。左は障害物知覚非獲得者、右は獲得者。

私達は、聴覚性運動が障害物知覚獲得のレベルを計る目安にならないかと考え、現在研究を続けています。

共同研究者

研究資金

本研究は、文部科学省および日本学術振興会の平成15年度科学研究費補助金基礎研究
盲人の姿勢制御に果たすエコーロケーションの役割に関する基礎的研究
の助成を受けました。

研究成果