研究概要
障害物知覚を獲得した人は、壁の存在によって起る音の変化だけを手がかりに壁の存在を知覚することができます。この性質を利用すると、音の変化を人工的に再現することにより、障害物知覚獲得者に音だけであたかも本物の壁があるかのように感じさせることができます。(図1)
私達は、この音によって作り出された壁をゆっくり近付けたり遠ざけたりすると、障害物知覚獲得者の体が壁の動きに同期して無意識に揺れることを発見しました。私達はこの現象を聴覚性運動(auditory kinesthesis)と名付けました。(図2)
聴覚性運動は、障害物知覚獲得者にしか見られません。何故なら、障害物知覚を獲得していない人は、音によって壁の存在を知覚できないため、壁が動いている様子が分からないからです。(図3)
私達は、聴覚性運動が障害物知覚獲得のレベルを計る目安にならないかと考え、現在研究を続けています。
共同研究者
研究資金
本研究は、文部科学省および日本学術振興会の平成15年度科学研究費補助金基礎研究
盲人の姿勢制御に果たすエコーロケーションの役割に関する基礎的研究
の助成を受けました。
研究成果
- Yoshikazu SEKI, Kiyohide ITO,
Objective Evaluation of Obstacle Perception using Spontaneous Body Movements of Blind People Evoked by Movements of Acoustic Virtual Wall,
Human Behavior and Emerging Technologies, Article ID 9475983, Volume 2022 (2022). - Yoshikazu SEKI, Kiyohide ITO,
Objective and Quantitative Evaluation Measure on Ability of Obstacle Sense by using Acoustical VR System and Body Movement Measuring Device in Rehabilitation for the Visually Impaired,
Universal Access in HCI (Proceedings of HCI International 2001, Proc. 3), 990-993 (2001). - [3] 伊藤精英、関喜一、
「聴覚性運動」を用いた障害物知覚を測定する試み(第3報) −仮想壁の振幅と身体動揺との関係−
、第27回感覚代行シンポジウム講演論文集、41-46 (2001).