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大木研究室
第49回

選別工程決定の段取り ④

 

~選別機ごとの適応粒度~

選別機ごとの適応粒度

前回、整粒工程の目的の1つとして「① 選別機ごとの適応粒度に合わせる」があることを述べた。これは整粒工程の最も基本的な役割として重要であることは間違いないが、それを正確に実施するには、使用予定の選別機群の適応粒度を知る必要がある。選鉱学のテキストやメーカのカタログなどには、各選別機の適応粒度が描かれているものもあるが、選別の可否とは無関係な単なる投入可能粒度であったり、極めて好条件が整った際の限界値が記されているものもあり、鵜呑みにはできない。適応粒度の決定は、対象物に応じて詳細な実験を実施することを、まずはお薦めする。一方、個別対象の各装置の適応粒度は分からなくとも、乾式選別か、湿式選別か、選別可能な粒度かなど、およその目安はあり、その適応粒度については第23回で述べた通りである。今回は、その適応粒度に至る因果関係の一端について述べたいと思う。

まず、第41回で述べた不確定要素(選別阻害因子)は、対象粒子と選別機の組み合わせで変わる。「選別基準物性(素材物性)差による意図した選別」と、「選別阻害因子のバラツキによる意図しない選別」のどちらが優勢かによって、得られる選別精度が変わる。回収したい粒子と除去したい粒子の選別基準物性差が大きい場合、素材物性とは無関係なサイズ・形状のバラツキがあっても、また、その装置で通常想定されるより小さなサイズの粒子でも、良好に選別できる可能性がある。第32回図4.2.1の「A,B粒子条件2」のようなケースである。例えば比重2と3の粒子を比重選別する場合、選別装置Xでの粒径下限が事実上1cmだとしても、対象が比重2と10であれば、mmオーダの粒子まで同じ精度で選別できる可能性が高い。選別基準物性差が大きいか、選別阻害因子の影響の方が大きいかは、対象粒子と選別機によって千差万別のため、一概に「選別機Xの適応粒度〇mm~〇mm」ということを決めることはできない。

また、適応粒度の「上限粒径」は、多くは装置の大きさなど機械的要素で決まる。一方、「下限粒径」は選別機の選別機構(原理)で決まることが多い。ここでは、すべての選別機に共通する、重力作用のみを考慮した粒子運動から、適応下限粒径について考えてみる。基本的には比重選別を想定したことになるが、すべての選別操作は重力作用下で行われるので、例えば磁選の場合は、ここに「磁力」という項が加わるものと考えていただきたい。運動方程式の詳細についてはいずれ記述したいと思うが、重力下で沈降する流体中の粒子の運動方程式を、下向きを+として、文字で簡単に書くと下記の様になる。

重力下で沈降する流体中の粒子の運動方程式を、下向きを+として、文字で簡単に書いたもの

この式の中で、粒子の素材物性は粒子の比重(密度)だけであり、比重が関与するのは①だけである。この式の範囲で言えば、選別基準物性(素材物性)に基づく選別とは、①に基づく運動差を利用することを意味する。その他はすべて、粒子のサイズ(体積や投影断面積)に関与する力であり、それ自身は素材物性とは無関係な項である。ここで、以下の「思考」を巡らす上では、ひとまず、④⑤は考えなくて良い。

図7.4.1 水中において粒子の運動にかかる力

空気中で実施する乾式選別では、①が十分大きいこと、すなわち、「粒子質量が大きい=粒子サイズが大きい」ことが条件となる。水に比べ粘度が低いので②は小さいが、粒子サイズが小さくなると、③の運動に支配されるようになり、いわゆる「舞ってしまう」状況になる。流体の流れを精密に制御したとしても、作用力自体は粒子体積に依存することになる。舞わずに、比重差依存で粒子運動に差を生じさせることを考えると、乾式による素材物性差選別の下限は概ね1mm程度と言える。これは1mm以上なら選別の遡上に乗るという意味で、既述のように実際の選別では、対象物と選別機の組み合わせや求める選別精度で下限粒径は変わる。また、1mm以下で、突然、選別できなくなる訳ではなく、選別機自体の制約がなければ、サイズが小さくなるにつれ選別精度は徐々に低下する。

概ね1mm以下の粒子では、空気中に比べ水中の方が流体の流れの制御がしやすく、湿式選別の方が選別精度を維持しやすい。しかし、デメリットも少なくない。まず、そもそも粒子サイズが小さくなると①の力(慣性)も小さくなる。一方で、流体の粘度が、空気に比べて大きくなるので、粒子の速度が著しく低下する。選別は、回収粒子と除去粒子の移動距離に差を与える操作であるから、選別に時間を要することになる。このため、重力場ではなく遠心場を利用することも多い。もう1つは、粒子サイズが概ね0.1mm以下になると、Reynolds数がStokes域に入るため、②の抵抗係数が大きくなる。これは①に基づいて粒子が動こうとしたとき、サイズが大きな粒子に比べ、その運動を抑止する②の力が相対的に大きくなることを意味する。つまり素材物性に基づく選別がし難くなる。このことから主に比重選別では、概ね10μm程度が選別の下限と言える。これ以下のサイズになると、サイズ差でしか選別できなくなるケースが多い。ただ、これも、選別基準の物性差、対象物と選別機の組み合わせ、求める選別精度で変わる。例えば磁選において、筆者はサブミクロン粒子まで高精度な選別を実現したこともあり、詳細な判定には、やはり実験による検証が必要となる。

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