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大木研究室
第23回

選別装置の選択 ①

 

~まずは粒子サイズで整理する~

まずは粒子サイズで整理する

筆者はこれまで、選別に関する数百件の技術相談をしてきたが、選別機Aの評判を聞いて「この試料を選別してみたい」という要望が多い。しかし、このような安易なアプローチで、適した選別機が見つかる可能性は非常に低い。物理選別では、粒子状態や選別目標に応じて、適した破砕-選別プロセスを選択することが必要である。そもそも対象物が単体分離していない例も多く、そのような場合は、選別より前に破砕(粉砕)方法から再検討することをお勧めしている。では、単体分離の状態が良好であった場合、選別機をどのように選んだらよいのか?選別機の選択手法として確立されたものはないが、今回から何回かに分けて選別機選択の考え方を述べていく。

選別機の選択では、装置価格、処理コスト、処理量などの制約もあるが、まずは希望の精度で選別できるかが課題である。その上で優先的に考慮すべきは、対象粒子のサイズである。実際にはサイズ以外の様々な粒子物性が選別精度に影響するので、個々の選別機の明確な適応粒度は定義できないが、サイズ選別自体が目的でない場合、粒子サイズが精度良い選別を阻害する最も大きな要因になると考えて良い。これには2つの意味がある。

①対象粒子の物性に応じ、選別機に適した粒度範囲が存在する。
 ②選別機の適用粒度範囲内であっても、粒子サイズに幅があると選別精度は低下する。
②の理由は選別機のタイプによって異なるが、特に比重選別など、粒子バルクの物性差を利用した選別機ではその影響が顕著である。精度良い選別をするには、事前にふるい分けをしてサイズごとに選別することが肝要である。これについてもいずれ詳述するが、ここではまず①に関して説明する。選別機の適用粒度範囲は、厳密に言えば各種選別機の機構上の制約や、サイズ以外の粒子物性、必要とする選別精度などによって決まるが、選別機構の特徴に基づいて、目安となるおよその適用粒度範囲は決まってくる( 図4.1.1)。

図4.1.1 選別機構上の特徴による適応粒子サイズの目安

いわゆるソータと呼ばれる「個別選別」では、1粒子ずつ選り分けるため、それが可能な概ね5mm以上の粒子サイズが適用範囲となる。また、このサイズでは比重選別や磁選などの「集合選別」の利用も可能であり、個別選別と同等の精度が得られるなら、コストや処理量の点から一般に集合選別の方が有利である。集合選別は1mm程度以上なら、空気中で選別する「乾式法」で十分な選別精度が確保できることが多い。実験室では、1mm以下でも選別できることがあるが、粒子が凝集し易く、水分や湿度の制御が必要で、選別精度の維持が難しいためあまり実用的でない。凝集を防ぐには、水中で選別する「湿式法」の適用が効果的である。ただし、粒子サイズが小さくなると、水中の粒子運動は遅くなり、選別に時間を要するようになる。さらに、集合選別の多くは、比重や磁性など粒子のバルク物性の差で選別する機構であるが、粒子サイズが小さいと粒子の慣性より水の粘性が支配的となる。水の粘性力は、粒子が動く方向の投影断面積の関数である流体抵抗として作用するため、バルク物性とは無関係に働く。言い換えれば、粒子は水の粘性に拘束され、バルク物性に応じた運動差が発現し難くなる。バルク物性利用の湿式選別において、有効な選別が可能な下限粒子サイズは通常50μm程度であり、細粒向けの特殊な選別機でも10μmサイズの粒子を精度よく選別すること難しい。このように、バルク物性の差による選別が困難な粒子に対しては、粒子表面の性質を利用した選別が用いられる。その最も有力な選別方法が浮選である。粒子表面の物性の差により、水中で発生させた気泡に付着し易いかどうかの違いで選別する。概ね10μm程度のサイズまで適用可能である。容易に変化しない(できない)バルク物性と異なり、水中の粒子表面物性は、様々な化学試薬(浮選剤)や水質で変化させることができる。これを巧みに制御することで、気泡への付着し易さに差を生じさせる。バルク物性利用では選別機の性能で選別の良否が決まるが、表面物性利用の浮選は、浮選機の性能よりも、変化し易い浮選機内の選別環境でその良否が決まるため、適切な制御が困難なケースも少なくない。

なお、粒子比重の大小で浮選時の浮き易さが変わると勘違いする方もおられるが、粒子の比重差に比べて気泡の浮力は非常に大きいため、粒子のバルク物性と浮き易さは無関係と思って良い。また、粒子サイズが小さくなると、バルク物性に比べ表面物性の影響が大きくなるから浮選が有効とする説明も見られるが、これは些か誤解を生みやすい。バルク物性利用選別では、バルク物性に基づいて作用する力が選別をもたらす粒子運動の起源となるが、表面物性利用の浮選では、表面物性が粒子運動の起源である訳ではない。表面物性の差は、粘性力支配下で水中をゆっくり漂い続ける粒子と、気泡に付着して粘性支配から脱するのに十分な浮力を獲得する粒子とに分ける、スイッチ(選択機能)として作用する。バルク物性差では選別が困難な場合でも、表面物性をうまく活用すると選別が可能となるということに過ぎず、粒子運動に対するバルク物性/表面物性の影響の大小が、浮選の有効性を導出しているわけではない。

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