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大木研究室
第24回

選別装置の選択 ②

 

~個別選別と集合選別 1 ~

個別選別と集合選別 1

前回、対象粒子の単体分離状態が良好であった場合、次の選別装置を選択するステップにおいて配慮すべき、選別機構の特徴に基づいたおよその適用粒度について述べた。この特徴を示す分類として、個別選別/集合選別、乾式法/湿式法、バルク物性利用/表面物性利用を挙げたが、まずは個別選別と集合選別から、その特徴を解説する。

各種ソータは、1粒子ずつ選り分ける機構を持つので、選別機の分類として、ここでは「個別選別」と呼んでいる。個別選別(各種ソータ)は、英語でsensor based sorterと呼ばれるように、選別の基準はセンサーによる検出結果に基づいている。センサー自身は対象粒子に運動力を与えないから、ここでは回収すべき粒子を認識するに留まる。この結果に基づいて、後段に設置されたエアノズルやパドルなどで、回収すべき(あるいは除去すべき)粒子に運動力を与え、選別する。選別は、文字通り、選り・分ける操作であるが、選ぶ工程と、分ける工程が独立しているのが特徴である。選ぶ工程は検出だけできれば良いので、大気中で高速に検出可能なセンサーは全て利用が可能であり、選別したい対象物の特徴に応じて選択することが可能である。センサーには可視光線、近赤外線、X線など、分析機器用のものが転用されるが、これを組み込んだ選別機はリサイクルに特化して開発されるものが多く、選別装置の生産数等の事情もあり、装置価格は集合選別機に比べ高くなる印象がある。なお、英語でsorterというと選別機全般を示すが、日本では個別選別装置のみをソータと呼ぶ習慣が定着している。

「集合選別」は、粒子を個別に選り分ける各種ソータに対比して筆者が付けた呼称である。ソータが出現する前は選別と言えばこれのことを示したので、従来、あえてこの括りで分類する習慣はなかった。個別選別も集合選別も利用目的は同じであるが、両者の機構は全く異なるので、高度な利用や選別機を開発する際には、その違いを十分に理解しておかなければならない。集合選別には大分類として、比重選別機、磁選機、渦電流選別機などがあり、さらに各分類には中分類として機構の違う選別機があり、場合によっては、その下位層にメーカによって異なる構造の装置がある。いずれも「選別機」と呼ばれるが、これは装置の利用目的を示すもので、個別選別のように「装置が意図的に選んで分けている」とは必ずしも言えない。集合選別では、目的を基準として選り分けているのでなく、「特殊な場」に粒子群を投入して、その場の秩序に従って粒子自身が移動する性質を、目的に沿うように利用しているだけである。言い換えれば、集合選別機とは、磁場、遠心場など、一定の制御が可能な「特殊な場」の提供装置とも言える。装置投入前の「場」で混在していた粒子群が、特殊な場に移し替えられたことで、自発的に運動をすることを利用する。粒子が一定速度以上で一定距離以上を移動することをもって、選り・分ける工程が同時になされる。また、集合選別の大分類だけをみても、これらの名称に一貫性はなく、厳密な意味では装置機能を示しているとも言えない。比重選別機、磁選機、渦電流選別機は、厳密に言えば、それぞれ「粒子の比重差」「粒子の磁化率差」「粒子の導電率の差」が、「装置内の粒子運動の一部に影響を与えることができる装置」である。粒子運動には粒子の様々な物性が関与するが、与えられた特殊な場においても同様で、着目する特定の物性の違いだけで粒子運動の差が生じるわけではない。特に、粒子のサイズが粒子運動に及ぼす影響(選別したい物性での選別を阻害)が大きい。上述の「粒子運動の一部に影響を与える」とは、選別機や選別対象によってその程度が異なるが、選別したい物性の影響(効果)が小さくなってしまう条件では、どの装置でも「サイズ選別」が起きてしまうことが多い。このことから、前回の②で示したように、「事前にふるい分けをしてサイズごとに選別することが肝要」となる。比重選別や磁選などを行った結果、回収産物と除去産物で粒子サイズに顕著な差があるようであれば、その影響が出ていることを意味するので、事前のふるい分けのサイズ幅を狭くするなどの対応が必要となる。

図4.1.2 個別選別と集合選別の選別機構の違い

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