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大木研究室
第25回

選別装置の選択 ③

 

~個別選別と集合選別 2 ~

個別選別と集合選別 2

前回、個別選別と集合選別における、「選ぶ工程」と「分ける工程」の違いについて述べた。個別選別では、センサーによって分けたい物性を精度よく検出することができれば、理論上は意図した選別が達成し得る。集合選別では、粒子の様々な物性の違いが粒子運動に反映されるため、「分けたいと思う物性」の違いだけで粒子が運動する訳ではない。粒子サイズなどを事前に揃え、選別を阻害するその他の因子の影響を極力排除する必要がある。この点だけをみると個別選別が優勢に見えるが、センサーの検出精度も100%ではなく、また、「分けたいと思う物性」を検出できない場合もあり、常に選別精度が勝るとはいえない。一方、前々回のコラムでは「個別選別と同等の精度が得られるなら、コストや処理量の点から一般に集合選別の方が有利である」と述べた。今回は、この点について述べたいと思う。

表4.1.3は、選別装置の機構に基づく、装置内の粒子配列の違いを概略したものである。選別装置をこのように分類することはあまりないが、選別機構と選別速度(処理量)の関係性をイメージするためにまとめたものである。

表4.1.3 選別装置内の粒子配列の違いによる特徴

個別選別は、1粒子ずつ検出して選り分ける必要がある。食品や各種原料に稀に存在する異物を除去する場合と異なり、リサイクルでは多成分が混在、あるいはA成分とB成分の割合が拮抗している場合や、双方ともに高純度で回収したい場合が多い。A/B成分双方への誤入を防ぐには、粒子はコンベア上に疎な状態(疎な2次元)で配置されている必要があり、粒子の重なりは禁物である。対象物によって多少異なるが、いずれのセンサーを用いた個別選別でも、概ね事情は同じである。一方、集合選別では、装置のタイプによって粒子の配列が異なる。吊り下げ型磁選機のようなタイプでは、「特殊な場」の秩序に従った粒子運動が、コンベアベルト(またはデッキなど)の幅方向に1列ずつ発生して選別がなされる。粒子の重なりはなるべく避けたいが、多少であれば許容され、ベルト上で密な単層状態(密な2次元)で配列させることが可能である。乾式選別法はこのタイプのものが多い。流動層タイプのエアテーブルなどもこれと似ているが、重産物と軽産物が積層配列となるため、便宜上、ここでは「密な2.1次元」タイプと名付けて区別した。湿式選別では液相中に粒子を分散させたスラリーを、「特殊な場」の秩序に従って粒子運動させる。これらには、密な2次元、2.1次元タイプのものもあるが、「3次元」に粒子を分散させた状態で選別するタイプも多い。適切な粒子濃度(パルプ濃度)に調整することは重要であるが、基本的には1粒子あるいは1粒子層ずつ分けるのでなく、A成分あるいはB成分が濃縮したスラリーごとに選別が行われる。

これらの粒子配列の違いによる、選別速度(単位時間当たりの処理量)の違いを考えてみる。初めにお断りしておくが、対象物や各種の選別装置の特徴によって選別速度は様々であり、イメージを伝えるに当たってかなり乱暴な前提条件を置いている。したがって、以下の示す数値は、粒子配列の点から見た選別速度の優位性のイメージに過ぎず、実際の装置の選別速度を示すものではないことをご理解いただきたい。まず、全てのコンベア(デッキ)は幅や速度(コンベア速度やデッキ上の粒子進行速度)が一定と仮定している。個別選別(疎な2次元)では粒子の周囲に空間を確保する必要があり、ベルト面積の1/4に粒子を配置したと考えた。このときの選別速度が1であったとき、「密な2次元」タイプの集合選別では、コンベアベルト上で個別選別の4倍配置できるので、選別速度は4となる。「密な2.1次元」タイプでは、同時に2層の選別ができるので更に2倍となり、選別速度は8となる。「3次元」タイプでは排出されるスラリーの濃度と量で選別速度が決まるが、仮に「密な2.1次元」の4倍の粒子を含むスラリーが同一の粒子進行速度で回収されたとすれば、選別速度は32となる。次に、上記に対して、それぞれ粒子サイズ(粒子径)が1/4になったときの選別速度を考えてみる。コンベアタイプでは、サイズが小さくなっても、ベルト上に置かれた粒子面積の和は同じと仮定すれば、粒子の高さだけが1/4になるので、それぞれ選別速度は1/4となる。すなわち、「疎な2次元」1⇒1/4,「密な2次元」4⇒1,「密な2.1元」8⇒2。「3次元」タイプでは、粒子サイズが1/4になっても、スラリー濃度が同じであれば選別速度は変わらないので32⇒32である。この時の選別速度を「1」とすると、それぞれの選別速度のイメージは表の最右列のようになる。

繰り返しになるが、粒子配列に基づくイメージであり、仮定の置き方によって数値は変わる。また、上記は同サイズの粒子を選別したと仮定しているが、各選別装置には適応粒度があるため、特定の対象物に対して、常にすべてのタイプの装置が利用可能である訳でもない。実際の選別では様々な条件で選別速度は左右されるが、選別機構による粒子配列の違いのみに着目すれば、原理的に表の下方の機構ほど選別速度が有利になる。これが、先に述べた「個別選別と同等の精度が得られるなら、コストや処理量の点から一般に集合選別の方が有利である」の理由である。

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