磁場中の波動関数
ナノチューブの軸と垂直に磁場をかけたときは, 有効質量方程式(1)で, と置けばよい. ここで, ランダウゲージを用いると, 特に では解析的な取り扱いが可能であり, 波動関数は
である.[14] ここで,
であり, はナノチューブの長さ, 磁気長 , は第1種の変形ベッセル関数である. はが小さいときの程度であり, が大きくなると指数関数的に増大することに注意する. は磁場に比例したパラメーターであり, ナノチューブの半径と磁気長の比の2乗である. 強磁場( )ではは円筒の下部のまわりに局在し, は上部に局在する. その局在長はの程度である. 一方, 弱磁場( )では, 波動関数が円周方向に広がっている.
また波動関数(5) に対応する群速度は
である. は4重に縮退しているのが, 輸送現象を考えるために, ナノチューブに入射する状態と出ていく状態を分離したことになっている. 磁場がないとき, 付近で正負の群速度 をもつ状態がK点とK'点に一組づつあり, 強磁場では群速度の大きさは指数関数的に減少し, それに対応し状態密度が指数関数的に増加する.