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おわりに

新しく発見された天然の量子細線であるナノチューブの輸送現象に関して理論的側面を中心に解説した. 金属的ナノチューブは独特な線形の分散を持ち, 不純物ポテンシャルによって電子は散乱されないという特別な性質を持つ. これは, 物理的にはベリーの位相の一例として理解された. ナノチューブは非常に大きな伝導率または平均自由行程を持つことを意味しており, 量子化コンダクタンスおよび巨大な正の磁気抵抗の観測による実験的検証が待たれる.

ナノチューブはトポロジー的にも独特な量子細線である. 5員環, 7員環などのトポロジカルな欠陥を含むナノチューブ接合系の輸送現象について, 独特なスケーリング則があることを解説した. このようなトポロジカルな欠陥を組み合わせれば様々な構造が考えられ, トポロジーが磁場中での電子状態, 特に輸送現象に及ぼす効果の研究はこれからますます発展することが期待される.

本解説では, 電子間相互作用は無視できる場合を取り扱った. 電子間相互作用が重要となる場合は, フェルミ準位で線形の分散が交差するので朝永ラッティンジャー流体としてボゾン化の手法で取り扱うことができるが, この話題については紙数の制約のため取り上げることのできなかったことをお断りしたい.[42]-[44]

最後に, 共同研究者である安食博志氏, 世利拓司氏, 松村啓氏, 齋藤理一郎氏, 伊神正貫氏, 鈴浦秀勝氏に深く感謝致します. 本稿で解説した著者らの研究は, 文部省科学研究費補助金の援助を受けて行われているものである. また, 中西は理研基礎科学特別研究員制度の援助を感謝致します.



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T. Nakanishi 平成16年3月19日