PVD・CVDデータベース

PVD・CVDデータベースについて

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液体を使う成膜方法と比較して、ドライ系コーティング法と分類されているPVDとCVDに関するデータベースです。

PVDは「Physical Vapor Deposition」の略で、物理的な表面反応を指しており、日本語では物理気相堆積法や物理蒸着と言いますが、成膜工程の性質の違いから、「真空蒸着」、「スパッタリング」、「分子線エピタキシー(MBE)」など、各手法で呼ぶ場合がほとんどです。一方、CVDは「Chemical Vapor Deposition」の略で、日本語でも英語と同様にCVDと呼ばれることが多いです。

本データベースに登録されている技術知識データは、著作権を有する組織、および著者に対してデータ利用の許諾を取り、出典を必ず表記して公開しています。

また、著作権が切れる50年以上前のデータについても、出典先をオリジナルまで遡って表記するようにしています。これにより、利用者が著者の権利を守りながら、安心して技術知識データを閲覧できるよう努めています。

PVD・CVDアニメーション(動画)データベース


図1. アニメーション(動画)事例データベース
(回転翼型油回転ポンプの原理)

PVD・CVDデータベースのコンテンツの一つとして、アニメーション(動画)事例データベースを用意しています。

これは、PVD・CVD技術知識情報をあまり知らない人にとって、動画とコメントを組み合わせてアニメーションを提供し、できるだけ視覚的なイメージで平易に技術知識情報が得られることを目標にしており、成膜法(スパッタリング、イオンプレーティング、熱CVDなど)や真空ポンプ(油回転ポンプ、油拡散ポンプなど)、膜評価法(ビッカース硬さ、電気抵抗率測定など)等についてのアニメーションがご覧いただけます。

図1は、回転翼型の油回転ポンプの原理を動画で説明したものです。画面中央に回転翼型油回転ポンプが現れて、シリンダ内に中心から偏心したロータが設置してあり、さらに、ロータに縦割りするように2枚の翼がそれぞれをシリンダに接触するように強力なスプリングが入っています。

ここで、ロータがその一部をシリンダと面で接触する部分を作り、この接面と翼の接点とで囲われた空間が拡大する空間で吸気し、縮小する部分で空気を圧縮して弁を持ち上げて排出する、というように、真空ポンプの動作過程を原理とともに説明しています。

機能別PVD・CVD加工条件・加工事例データベース

PVD・CVDでは、薄膜を基板や製品にコーティングすることにより、表面を硬くする・導電性を良くする・耐熱性を高めるなど、様々な機能を表面に付与することができますが、その際、どのような材料が有効で、また、どんな薄膜の特性を示すのかは、専門家に問い合わせるか、過去の文献を詳細に調べないと知ることができません。

そこで、薄膜の機能(特性)別にPVD・CVD事例データを整理して、成膜条件を変化させた場合の膜特性を提示する「機能別PVD・CVD加工条件・事例データベース」を開発しています。

PVD・CVD膜で得られる「機能(特性)」(機械特性、電気特性、光学特性など)を画面から一つ選択し、選択した「機能(特性)」に対しての「機能(物性)」をプルダウンメニューから選択します。 (例えば「機械特性」なら、「硬さ」、「摩耗係数」、「引張強度」、「密着強度」などの機能(膜特性、膜物性)があります)。そして、「成膜材料(金属や酸化物、炭化物、窒化物など)」から一つ選択して決定ボタンを押すと、事例データリストが表示されます。ここから、更に閲覧したい事例データを選択することで、選択した膜特性を縦軸・成膜条件パラメータを横軸とした図とともに、各種成膜に関わる条件(成膜法、基板材料、成膜室圧力、基板温度など)や出典が表示されます。


図2. 機能別PVD・CVD加工条件・加工事例データベース
(機械特性:TiNのビッカース硬さの基板温度・ガス供給量依存性)

ここで、横軸は、成膜室圧力、基板温度など、現場の作業者が設定したり、変化させたりできる条件パラメータを変化させたものを用意してあり、現場作業でイメージを持てるようにしています。これを利用することで、付与したい膜特性(機能)ごとに素早く参考となる成膜条件を知ることができます。

もちろん、膜特性や膜物性や最適化された成膜条件は、成膜装置ごとに異なります。しかしながら、こうした基本的な膜物性値が示す傾向は参考になるものと考えており、新製品を素早く作製しなければならない場合において、特に有益となると考えています。

材料別PVD・CVD加工条件・加工事例データベース


図3. 材料別PVD・CVD加工条件・加工事例データベース

薄膜の設計や成膜現場では、どのような元素を成膜するのがよいのかをまず検討する場合が多いかと思います。そのため、左図に示したように、あらかじめ元素周期表をインターフェースとして画面に表示させ、ここでボタンを押して元素を選択すると、関連のある元素のみが残って表示されます。

ここでリストを選択すると、選択された元素に関連した材料機能(膜特性)ごとに各種成膜法で実現できる膜特性の範囲を提示します。

例えば、TiNの化合物に関するデータを調べる場合、チタン(Ti)元素をクリックすると、Tiに関連するデータだけが表示され、さらに窒素(N)元素をクリックすると、TiとNを含む化合物に関連するデータだけが残り、元素を選択して、項目を絞込みながら事例を検索することができます。

さらに「データリスト」タグをクリックして、調べたいTiNの「摩耗係数」を選択することで、各種成膜法であるイオンプレーティングやスパッタリングなどで実現できる「摩耗係数」の範囲が比較表示されます。

PVD・CVDトラブル対策事例データベース


図4. PVD・CVD皮膜から見たトラブルと
解決法データベース画面

PVD・CVDに関する様々なトラブル(欠陥)とその原因、および対策法を提示するコンテンツです。

画面上の「PVD・CVD成膜材料」と「基板材料」、「成膜法」からそれぞれ一つずつ選択すると、その場合に発生した「トラブル(欠陥)」のリストがプルダウンメニューに表示されます。このリストから一つ選択することで、この場合に考えられる「トラブルの原因」リストがプルダウンメニューに現れ、その中から一つ「原因」を選択すると、選んできた項目に対する「原因解説」、「対策法(対策例)」が「出典」とともに表示されます。

図4は、「成膜材料」として「TiN」、「基板材料」として「金属」、成膜法として「アーク放電型イオンプレーティング」、「トラブル内容」として「密着力不足」、「原因」として「非窒化チタン中間層」と順番に選択した場合に表示された画面です。

「原因解説」として、「純金属Ti膜は結合強度が弱いためにTi窒化物に比べると極めて軟質で剪断しやすく、基板(基材)にN欠損Ti窒化物中間層が入りその上にTi窒化膜が形成された場合、膜に引っ掻き応力が加わるとN欠損Ti窒化物中間層内にて剪断が走り膜剥離を引き起こす」、ということが画面に表示されます。それと同時に「対策」が表示されて、「時々刻々の蒸発レートに適したN2反応分圧を制御して、N欠損Ti窒化物中間層を生じさせないようにすることにより膜剥離が解決した」ことについて述べています。

こうした「トラブルと対策事例データベース」を利用することで、同じような問題点を抱えている場合に、解決へのヒントを得ることができると考えています。

計算プログラム集

ドームへの基板セット枚数計算プログラム


図5. ドームへの基板セット枚数計算プログラム画面

データベース内では、PVD・CVDに関する計算プログラムをいくつか用意していますが、その中から3つのプログラムを簡単にご説明します。

ひとつは「ドームへの基板セット枚数計算プログラム」です(図2)。大型基板や眼鏡レンズなどに成膜を施す場合、成膜装置内の基板ドーム内に基板がセットできる枚数を決定しなくてはならず、加工費の見積もりや基板ドーム加工を行う場合にも必要となります。

本プログラムでは、基板ドーム上の基板あるいはホルダーの数を横方向や縦方向にした場合を立体的に計算し、チャンバー内ドームへのセット最大枚数を確認することができます。

計算で得た基板の効果的な配置により、1回の成膜プロセスでの品物数を最大限確保することができます。

光学薄膜用光学特性計算プログラム


図6. 光学薄膜用光学特性計算プログラム画面

PVD・CVDでは、薄膜をガラス製品や樹脂製品に堆積させて、光学部品の作製を実施しますが、その場合にどのような材料をどれくらいの膜厚で、どのような構造にすればよいのか、得られる光学特性を予測することがとても重要となります。その際に、このプログラムが役立ちます。

まず、プルダウンメニューから「光学薄膜の構造」と、「反射率・屈折率」、あるいは「反射率位相・屈折率位相」から一つ選択します。次いで、「入射媒質の屈折率」(例えば、空気の屈折率1)、「基板の屈折率」(例えば、1.52)、「薄膜の屈折率」(例えば、1.38)、「薄膜の物理膜厚」(例えば、100 nm)を入力し、さらに、「波長範囲(nm)」(例えば、380〜780 nm)と「計算ステップ」(例えば、1 nm)を入力して「計算ボタン」押すと、計算が実行されてグラフに計算結果が表示されます。また、「計算表示ボタン」を押すと、アプレットが表示され、入力した波長での「反射率」、「透過率」、「反射波位相」、「透過波位相」が数値表示されます。

真空中の透明誘電体薄膜の屈折率計算プログラム


図7. 真空中の透明誘電体薄膜の
屈折率計算プログラム画面

一般に、成膜した薄膜を大気中に取り出すと、大気中の水分子が薄膜に進入し、薄膜の屈折率が徐々に大きくなります。そのため、薄膜の膜厚を制御するためには、真空中で成膜中の薄膜の屈折率を求める必要があります。

本計算プログラムは、「真空中の透明誘電体薄膜の屈折率計算プログラム」というもので、真空蒸着装置などで膜厚制御に利用されている光学式モニターを利用して、真空中の薄膜の屈折率を求める計算プログラムです。

まず、基板(片面マット、両面研磨)と、測定する光学特性(反射率、透過率)を選択項目から一つずつ選択し、次に、波長分散(使用しない、ハルトマン、セルマイヤー)から一つ選択します。さらに、光学式モニターで実測したときの「制御フィルター波長」、「スタート光量」、「ピーク光量」を入力して計算ボタンを押すと、屈折率が計算されます。このときの計算で得られた「屈折率」を3つ選択する点のどれに当たるのかを決定します。

同様にして3点の「屈折率」を求めて、それらを波長分散(ハルトマン)理論式に当てはめて係数を求めることで近似式が得られ、必要な波長での「真空中の薄膜の屈折率」が理論的に予測可能となります。

参考文献

  • PVD・CVDデータベース : 登録商標 産業技術総合研究所
  • 廣瀬伸吾, "中小企業の「ものづくり力」強化に向けた「ものづくり技術インフラストラクチャー」の構築 第5回  PVD・CVDデータベース(3) −受託加工業者へのアンケート調査−", 真空ジャーナル, Vol.126, pp.36-39 (2009) .
  • 廣瀬伸吾, "中小企業の「ものづくり力」強化に向けた「ものづくり技術インフラストラクチャー」の構築 第4回 PVD・CVDデータベース(2) −トラブル対策事例DB、計算プログラム集− ", 真空ジャーナル, Vol.125, pp.30-33 (2009) .
  • 廣瀬伸吾, "中小企業の「ものづくり力」強化に向けた「ものづくり技術インフラストラクチャー」の構築 第3回  PVD・CVDデータベース(1) −アニメーション事例DB、加工条件・事例DB−", 真空ジャーナル, Vol.124, pp.34-37 (2009) .
  • 廣瀬伸吾, "中小企業の「ものづくり力」強化に向けた「ものづくり技術インフラストラクチャー」の構築 第2回  加工技術データベース", 真空ジャーナル, Vol.122, pp.48-52 (2009).
  • 廣瀬伸吾, "中小企業の「ものづくり力」強化に向けた「ものづくり技術インフラストラクチャー」の構築 第1回 テクノナレッジ(技術知識)・ネットワーク ", 真空ジャーナル, Vol.121, pp.48-52 (2008).
  • 薄膜ハンドブック表紙の写真廣瀬 伸吾, "薄膜の耐熱性", 薄膜ハンドブック(第2版), pp.543-546 (2008).

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