Separation of single-wall carbon nanotubes

 カーボンナノチューブ(CNTs)は特有の電気的・光学的・機械的性質を有しており、次世代のナノテクノロジーを支える材料として注目されています。一般的にカーボンナノチューブは異なるカイラリティの混合物として合成されますが、カイラリティの違いによってCNTsは金属型・半導体型の性質をもつため、合成後にCNTsを金属型と半導体型に分離すること(半金分離)がCNTsの応用上必須となっています。当グループでは、ドデシル硫酸ナトリウム溶液(SDS)へ分散させたCNTsをアガロースゲルビーズのオープンカラムに滴下することで、CNTsの半金分離に成功しました(Appl. Phys. Express 2, 125002, 2009)。しかしながら、CNTsの半金分離の原理がほとんど不明なのが現状です。現在、CNTsの半金分離原理の解明を試みており、加えて当知見を活かしたCNTsの精製法も提案しております(J. Phys. Chem. C, 115, pp 21723-21729, 2011; J. Phys Chem. C 116, pp 9816-9823, 2012; ACS Nano, 6, pp 10195-10205, 2012)。

Purified CNTPurified CNT

Dispersion of carbon nanotubes using protein

 カーボンナノチューブ(CNTs)は水溶液中で分散せずに凝集することがCNTs応用の障壁になっております.現在,バイオテクノロジー分野への応用に向けて,生体適合性の高い生体分子を用いたCNTsの分散の研究が盛んに行われており、なかでもタンパク質を用いたCNTsの分散に関する研究は2006年以降活発に行われてきております.(Langmuir, 22, 1392-1395, 2006; Small, 2, 406-412, 2006)
 通常,界面活性剤に比べてタンパク質は界面活性能が低いため,タンパク質のみではCNTsを効率良く分散できませんが,我々はタンパク質溶液へ共溶媒や溶質を加えることでCNTsの分散性を向上させる方法を提案してきました.
[アルコールの添加による分散向上] アルコールはCNTsと相互作用することが報告されており(J. Am. Chem. Soc., 132, 842-848, 2010),アルコールとポリマーを併用することでCNTsを分散させることが可能です.(Langmuir, 21, 1055-1061, 2005) 同様のアプローチによって,タンパク質を用いたCNTsの分散もアルコールによって改善されることが明らかになりました(Chem. Eur. J., 15, 9905-9910, 2009)
[カオトロープの添加による分散向上] 尿素やグアニジン塩酸塩はカオトロープと呼ばれており水溶液中の疎水性物質の溶解性を高める作用を有しております.(J. Biol. Chem., 245, 1648-1652, 1970; J. Biol. Chem., 238, 4074-4081, 1963) 特に、尿素はCNTsと相互作用することが報告されております.(J. Am. Chem. Soc., 132, 842-848, 2010; J. Phys. Chem. B, 114, 5427-5430, 2010) 我々は,アルコールと同様に,カオトロープを用いてタンパク質溶液中でのCNTsの分散性を向上できることを示しました.(Chem. Eur. J., 16, 12221-12228, 2010) 興味深いことに,高濃度のカオトロープ溶液中ではCNTsの分散性が著しく低下することが観察されました.高濃度のカオトロープはCNTsとタンパク質を解離させる性質を有するため,CNTsの分散性の低下が引き起こされたと考えられます.このように、カオトロープを使えばCNTsの分散性を制御することが可能であることは大変興味深いです.
著書:工業用炭素材料,ナノカーボン材料の表面処理 -ノウハウ-


Protein corona (protein-carbon nanotube conjugates)

 当研究では、ナノ粒子の表面に局在するタンパク質コロナの物性理解を目指しております。生体内に取り込まれたナノ粒子はタンパク質の物理吸着によって表面修飾されることが知られております。このようにナノ粒子表面で形成されたタンパク質の層は2007年にK. A. Dawsonによって「タンパク質コロナ」と名付けられ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:2050-2055, 2007)、ナノ粒子の有害性と関係することが近年認識されてきております。例えば、タンパク質間相互作用の阻害(Nat. Nanotechnol. 6:11-12, 2011)、免疫系の障害(Sci. STKE 2006:pe14, 2006)、タンパク質の線維化(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:8691-8696, 2007)、細胞膜の構造変化を招くことが報告されております(Nat. Nanotechnol. 4:84-85, 2009)。
 タンパク質コロナ形成の原因となるナノ粒子へのタンパク質の吸着は基本的に可逆的な平衡状態にありますが。最近では、このような可逆的吸着によって、タンパク質コロナの組成が時々刻々と変化することが明らかになってきました。(Nano Today 3:40-47, 2008; ACS Nano 4:3623-3632, 2010)吸着の可逆性はタンパク質の種類や溶液環境、さらに、ナノ粒子表面の化学修飾や物理修飾にも依存します。加えて、ナノ粒子の表面の性質にも大きく依存することが明らかになりました。
 我々はカーボンナノチューブのタンパク質コロナに関する研究を行なっております(Langmuir 26, 17256-17259, 2010)。カーボンナノチューブとタンパク質の相互作用に関する実験は1999年以降活発に行われてきており(Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 38:1912-1915, 1999) 、同時に、コンピュータの発達によって、分子動力学計算(Biomaterials 29:3847-3855, 2008)や量子化学計算(J. Chem. Theory. Comput. 5:2879-2885, 2009)を利用した理論研究も進捗を見せているところです。
 最近、我々はタンパク質のナノ凝集体がタンパク質コロナと同様に脂質二重膜の凝集や破壊を引き起こすことを明らかにしました(Langmuir 26, 17256-17259, 2010; Langmuir, in press)。当結果は、タンパク質のナノ構造体(タンパク質コロナとタンパク質ナノ凝集体)に内在する特有の生物物理学的な物性を提案するものであり、現在その全容解明を目指している。