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新しく発見された天然の量子細線であるナノチューブの輸送現象に関して理論的側面を中心に最近の実験の一部も含めて解説した.
金属的ナノチューブは独特な線形の分散を持ち, 不純物ポテンシャルによって電子は散乱されないという特別な性質を持つ.
これは, 物理的にはベリーの位相の一例として理解された.
ナノチューブは非常に大きな伝導率または平均自由行程を持つ.
ナノチューブと電極の接合はその一次元性を反映して特殊である.
2種類のナノチューブを組み合わせた系として, 交差したナノチューブ, ナノチューブ接合系を紹介し, デバイスの応用を議論した.
最後に, 電子間相互作用が重要となる場合について朝永-Luttinger流体との関連を紹介した.
ここ数年ナノチューブの電気伝導に関する実験的研究が進み, 10年前のナノチューブ発見直後から理論的に予言されてきた物性の幾つかが確かめられ始めている.
本解説で紹介したように様々なナノデバイスへの応用が実験的に示され, この方面への発展も期待される.
最後に, 共同研究者である安食博志氏, 世利拓司氏, 松村啓氏, 齋藤理一郎氏, 伊神正貫氏, 鈴浦秀勝氏, Dr. Adrian Bachtold, Professor Cees Dekkerに深く感謝致します.
本稿で解説した著者らの研究は, 文部省科学研究費補助金の援助を受けて行われているものである.
また, 中西は学術振興会海外特別研究員制度の援助を感謝致します.