第30回
選別装置の選択 ⑧
~精選と清掃選~
精選と清掃選
前回は、選別工程の基本的な考え方を示したが、選鉱においては、同じ選別機で2度、3度、繰り返し選別することも珍しくない。このような場合、最初に行われる選別を「粗選(roughing)」、回収産物(有価物濃縮物)を再び選別することを精選(cleaning)、除去物を再び選別することを清掃選(scavenging)という。今回は、これらにどういう意義や特徴があるかについて述べる。
バルク選別は、粒子を特殊な場に置き換える操作だと言ったが、置き換えた場の秩序に従って粒子が移動するには時間がかかる。その時間は、第25回で示した集合選別の「タイプ」にもよるが、初期状態の粒子位置やその後の軌道、粒子間の衝突、粒子の抱き込みなど、様々な要因が影響する。やや乱暴な言い方をすると、無限大の時間を掛けることができれば、いつかは場の秩序に従った粒子の移動が完了するが、多くの選別機では、粒子の移動が完了する前に、不完全な状態(非定常の段階)で選別が終了してしまう。これを解消するのが、粗選後に行う、精選、清掃選である。精選とは回収産物の純度を上げる操作、清掃選とは除去物に残留する有価物を回収して、回収産物の回収率を上げる操作である。場合によっては、粗選と異なる選別機構の装置を使う場合もあるが、同じ選別機で繰り返し選別を行うことが多い。その場合、選別を繰り返しても、個々の操作における「選別の精度」が上がる訳ではないので、精選では、回収産物の純度は上がるが、回収率は下がる。また、清掃選で得られた有価物を回収産物と混ぜれば、有価物の回収率は上がるが純度が下がる(図4.1.8)。つまり、精選、清掃選とは、基本的には同じ選別精度の中で、有価物の純度または回収率を目的に近づけるための操作である。なお、ここで言う「選別の精度」とは、選別操作の精度(選別の巧みさ)であって、選別結果の精度を示す分離効率のことではない(第20回参照)。
図4.1.8 一般的な精選・清掃選の機能
例えば、有価物を売却するのに純度80%であれば十分な場合、粗選後に純度75%であれば、回収率は低下するが「精選」によって純度80%を目指す。逆に、粗選後に純度90%であったなら、純度に10%余裕があるので、純度を80%に低下させるまで、「清掃選」によって回収率を回復させることが可能となる。
このようにして、回収率を犠牲にして純度を高めたり、純度を犠牲にして回収率を高めることができるが、選別精度の低さによる影響を、純度側に寄せるか、回収率側に寄せるかの問題であり、1度で理論通りの選別が行える装置であれば、精選も清掃選も必要ない。一般論で言えば、あまり選別精度は良くないが大量に選別できる装置や、確率的な選別がされがちな(選別機会が全粒子に均等に与えられない)細粒選別において有効な手段である。また、これが成立するのは、対象粒子が、選別装置に適応した粒度で、かつ、相応に単体分離している場合に限られる。これらが備わっていない場合は、何度、精選、清掃選を繰り返しても、得られる産物はほとんど改善されない。