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大木研究室
第29回

選別装置の選択 ⑦

 

~選別工程の決め方~

選別工程の決め方

前回は、対象粒子のキャラクタリゼーションを元に、どのような選別機を選ぶかについて、その基本的な考え方について触れた。現状の「AESS」は対象物を電子素子に限定しているため、その特性に応じた選び方だけ考えれば良いが、多様な粒子を対象とした場合には都度の判断が必要となる。これについても将来は、体系的な整理をしたいと考えている。一方、使用する装置は通常、複数機を選択することになるので、その順序を考えた選別工程を決める必要がある。これについては定番の工程に倣う慣習であり、あえて語られることは少ないが、簡単にその考え方を解説する。

ある粒子群に対して、「サイズ選別」「磁選」「比重選別」による選別工程を考えるとする。磁選も比重選別も、対象の粒子サイズによって装置や選別条件を変える必要があるので、まずは「サイズ選別」を行なう。これは、初めからサイズが揃っており、サイズ選別の必要がない場合を除き、ほぼ例外なく選別工程の最初に行なう。では、次に来るのは磁選だろうか?比重選別だろうか?図4.1.7は、サイズ選別により特定の粒群(例えば1cm~4cm)が選ばれた後の選別工程と考えていただきたい。選別工程A-1, A-2は磁選機と比重選別機で、機械的に4つの産物に選別したケースである。同一サイズであれば、磁選における粒子比重、比重選別における粒子磁性は、ほとんど選別精度に影響しないので、比重選別AとB、磁選AとBはそれぞれ同じ装置、同じ制御条件となり、A-1でもA-2でも得られる4産物は同じで、A-1とA-2に優劣は存在しない。次に、磁選は鉄を回収(除去)するために使用するもので、回収する産物種が3産物である場合を考える(選別工程B-1, B-2)。この場合も回収された3産物は同じであるが、選別の工数はB-1が工数2(磁選1+比重選別1)に対して、B-2は工数3(磁選1+比重選別2)となり、より単純なB-1の方が合理的な工程と言える。また図に付された数値は選別機に投入される試料量で、仮にこの数値のようなケースでは、B-1の選別総量が140(磁選100+比重選別40)であるのに対し、B-2では200(磁選100+比重選別100)となる。つまりB-1の方が、同じ結果を得るのに、比重選別の稼働率・ランニングコストを下げることができる。空いた時間に他の産物を選別したり、小型の比重選別機でも対応できるようになるため、有利と言える。このように対象物を絞り込んでいく選別工程では、絞り込みが大きくなる選別を先に実施する。ただし、これは鉄に他の有価な非磁着物が混在しない場合で、磁着物の選別がさらに必要な場合は、総合的な判断となる。また、使用している選別機の処理量が少ない場合には、これらは、なるべく後の工程で利用することが肝要である。

図4.1.7 選別工程の基本的な考え方

図示したようなごく単純な工程では、上述したことは至極当たり前のことと思われるだろうが、選別工程が複雑になると見落としがちなポイントでもある。実際、筆者が過去に訪れたリサイクル工場では、装置を付け足してきた歴史的経緯から、工程を組み替えれば、同じ産物をより合理的に得られる(工数を減らしたり、処理量を増大できる)と思われた例も散見された。リサイクル工場を運用している方は、いま一度、このような基本に立ち返って、工程を見直してみることをお勧めする。

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