研究紹介

コンセプト

先進レーザープロセスグループは、レーザー開発とレーザー加工・計測の専門家が同じグループにいる優位性を活かし、エレクトロニクス・製造・医療・バイオ・環境など主要産業分野に貢献できる、そして“新たな価値”を提供できる技術開発を目指しています。
レーザー加工の真髄である光と物質の相互作用を探求し、ものづくり・医療など様々な分野に貢献できる技術開発を目指しています。独自のレーザー転写技術から、超短パルスレーザーのアクティブ制御/インプロセスモニタリング/機械学習を利用した高速パラメータ最適化による各種材料の精密微細加工など、よりよい未来を夢みて研究に取り組んでいます。

研究開発のコンセプト
図 研究開発のコンセプト

主要な研究テーマ

1.レーザー転写による物質デリバリー

キーワード: ナノ/マイクロ粒子、大気圧描画、タンパク質、早期治癒支援コーティング、エレクトロニクス、医療

パルスレーザー光を材料に照射すると、過渡的/局所的に高温高圧場が形成される結果、材料のレーザーアブレーション(蒸発)が誘起されます。このレーザーアブレーションを巧みに利用し物質をデリバリーできる手法が“レーザー転写”です。レーザー転写によれば、他技術では難しいナノ/マイクロ粒子やタンパク質など幅広い物質を、大気圧化でオンデマンド(=狙った場所に)堆積することができます。

我々は現在、他大学の研究者らとも協力し、どこまで小さいナノ粒子を描画できるのか、活性の高いタンパク質担持材料を患部にデリバリーできるのか他技術では難しい研究テーマにも果敢に挑戦しています。

レーザー転写が拓く新しい物質デリバリー技術と応用
図 レーザー転写が拓く新しい物質デリバリー技術と応用.
図 レーザー誘起ドット転写法によるマイクロ/ナノドットの大気圧描画.
図 生理活性たんぱく質担持マイクロチップのレーザー転写.

参考文献

  • “Nanodot array deposition via single shot laser interference pattern using laser-induced forward transfer”, Yoshiki Nakata, Eiki Hayashi, Koji Tsubakimoto, Noriaki Miyanaga, Aiko Narazaki, Tatsuya Shoji, and Yasuyuki Tsuboi, International Journal of Extreme Manufacturing, (2020) in press; https://iopscience.iop.org/article/10.1088/2631-7990/ab88bf/pdf.
  • “Bioactive micropatterning of apatite immobilizing cell adhesion protein by laser-induced forward transfer with a shock absorber”, Aiko Narazaki, Ayako Oyane, Saki Komuro, Ryozo Kurosaki, Tomoko Kameyama, Ikuko Sakamaki, Hiroko Araki, and Hirofumi Miyaji, Optical Materials Express, 9 (2019) 2807; https://doi.org/10.1364/OME.9.002807.
  • 「レーザー転写パターニング -ナノ粒子から機能性薄膜までー 」 ,奈良崎愛子, オプトロニクス,433 (2018) pp.127-131.
  • "On-Demand Patterning of Indium Tin Oxide Microdots by Laser-Induced Dot Transfer",A. Narazaki, R. Kurosaki, T. Sato, and H. Niino, Applied Physics Express,6 (2013) 92601.

2.データ駆動型レーザー加工

キーワード: パラメータ最適化、インプロセスモニタリング、機械学習、シミュレータ、超短パルスレーザーの高速制御、微細穴あけ、表面ナノ周期構造、マイクロクラック、無反射特性、ガラス、透明材料

先端レーザー加工の産業実装には、複雑相関するマルチパラメータをいち早く最適化する必要があります。これまでは技術者の経験と勘を頼りにプロセス最適化してきましたが、産業競争力強化や省人化のために、より早く最適化できる仕組み(システム)が求められています。そこで我々は、技術者の五感となるインプロセスモニタリング技術、それらのデータから高速最適化を実現する機械学習法、そして最適化パラメータに高速応答する超高速レーザー制御技術といったコア技術の研究開発を通じて、データ駆動型レーザー加工の開発に取り組んでいます。 最近では、ガラスなど透明材料のレーザー微細加工プロセス(穴あけ、表面ナノ周期構造形成)において、クラック発生や表面ナノ周期構造から生じる無反射特性をインプロセスモニタリングできる技術を開発し、その結果、加工の歩留まりが顕著に向上する成果が得られています(東京農工大学 宮地悟代先生グループとの共同研究成果:プレスリリースリンク https://www.tuat.ac.jp/outline/disclosure/pressrelease/2022/20220829_01.html)。

図 データ駆動型レーザー加工.
図 超短パルスレーザーパラメータの高速制御(by 産総研 吉富).
図 インプロセスモニタリングを利用したガラス表面へのLIPSS形成による無反射構造形成.

References

  • 「ICTデータ活用型アクティブ制御レーザー加工の展望」,奈良崎愛子、吉富大、高田英行、長井大輔、宮地悟代(東京農工大学),フォトニクスニュース,8-2 (2022) 113-117.
  • 「循環型ものづくりを目指して -ICTデータ駆動型レーザー加工-」,奈良崎愛子、吉富大、高田英行,オプトロニクス ,41巻9号(2022)pp.79-83.
  • “Data-driven ultrashort pulse laser processing toward real-time CPS”, A. Narazaki, D. Yoshitomi, H. Takada, D. Nagai, G. Miyaji, ICALEO 2022 Proc, Micro701 (2022) 1-6.

3.広域パラメータ可変超短パルスレーザー加工

キーワード: 超短パルスレーザー、微細穴あけ、切断、セラミックス、AlN、Al2O3, YSZ, CMC

超短パルスレーザー加工は、材料への熱影響が小さく、アブレーションプラズマによるパルス遮蔽の影響が少ないためパルスエネルギーを効率的に利用でき、優れた加工品位を実現できます。我々は、超短パルスレーザー加工の高生産性・高品位化を目指し、レーザー照射パラメータを広範に可変できるパラメータ可変超短パルスレーザーを開発しました。例えば、レーザーパルス幅を400 fsから400 psと3桁の範囲で可変できます。 現在は、我が国が販売額において世界の約5割を占めるファインセラミックスを中心に,その微細加工にといて、非熱的加工と熱的加工について加工部の表面モルフォロジーから定義し、「非熱的/熱的加工境界」の探索に取り組んでいます。この境界のレーザー・材料パラメータ依存性を解明できれば、レーザー加工現象のより深い理解につながり、よりよい加工レシピ提供ができると考えています。

図 セラミックスの超短パルスレーザー加工.
図 広域パラメータ可変レーザーを用いたYSZセラミックスの微細穴あけ.
図 セラミックスの非熱的-熱的レーザー加工境界.

References

  • “Study on nonthermal–thermal processing boundary in drilling of ceramics using ultrashort pulse laser system with variable parameters over a wide range”, Aiko Narazaki, Hideyuki Takada, Dai Yoshitomi, Kenji Torizuka, and Yohei Kobayashi, Applied Physics A, 126 (2020) 252; https://link.springer.com/article/10.1007/s00339-020-3410-2.
  • “Pulse Width Dependence of Heat Accumulation in Ultrashort Pulse Laser Processing”, Aiko Narazaki, Hideyuki Takada, Dai Yoshitomi, Kenji Torizuka, and Yohei Kobayashi, ICALEO 2019 Proceedings, (2019) Nano604.

4.各種材料・デバイスのレーザー微細加工

キーワード: ガラス、半導体、穴あけ、太陽電池、スクライブ、透明導電膜

レーザー加工は、ものづくり産業の欠かせないツールとして世界規模で市場が拡大しています。真空環境や多量の薬液を要さず、非接触で微細な加工を可能とするレーザー微細加工技術は、高速・高品位製品を産み出すツールとしてその存在感を増しています。我々グループではこれまで、脆性材料であるガラスを中心に、セラミックスや半導体など各種材料において、意匠性に優れた、また他手法では難しい高アスペクト比な微細加工を実証してきました。

さらに多分野の先端研究を掲げる産総研の強みを生かし、材料にとどまることなく、高効率・高耐久な太陽電池(CIGS太陽電池、ペロブスカイト太陽電池)などのデバイスのレーザー加工とその特性評価にも取り組んでいます。

CIGS太陽電池の透明導電膜リフトオフによるスクライブ: SSRM測定による断面抵抗マッピング(上)とSEM写真(下)
図 CIGS太陽電池の透明導電膜リフトオフによるスクライブ:
SSRM測定による断面抵抗マッピング(上)とSEM写真(下).
レーザー誘起背面湿式加工(LIBWE)法によるガラスの意匠性マーキング
図 レーザー誘起背面湿式加工(LIBWE)法による
ガラスの意匠性マーキング.
CIGS太陽電池のレーザースクライブ
図 CIGS太陽電池のレーザースクライブ.

参考文献

  • “Evaluation of femtosecond laser-scribed Cu(In,Ga)Se2 solar cells using scanning spreading resistance microscopy”, Aiko Narazaki, Jiro Nishinaga, Hideyuki Takada, Tadatake Sato, Hiroyuki Niino, Kenji Torizuka, Yukiko Kamikawa-Shimizu, Shogo Ishizuka, Hajime Shibata, and Shigeru Niki, Applied Physics Express, 11 (2018) 032301.
  • “Fabrication of Micropits by LIBWE for Laser Marking of Glass Materials”, Tadatake Sato, Aiko Narazaki, and Hiroyuki Niino, Journal of Laser Micro / Nanoengineering, 12 (2017) 248-253.

5.レーザー表面改質

キーワード: CFRP、表面層除去、TiO2含有ガラス、光触媒、マイクロ流路

材料表面は機能性・耐性・意匠性を大きく左右するため、表面改質技術は、材料の高付加価値化に欠かせないキーテクノロジーであり、私達の生活を豊かにしてくれています。

我々はこれまで、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic, CFRP)や多成分系ガラスへのパルスレーザー照射により、表面樹脂層の選択的除去やガラス表面に光触媒能が付与できる手法を基礎実証してきました。これらは産業に有用なだけでなく、多成分間の光・熱物性の違いを反映した“ユニークな現象”として基礎科学的にも非常に興味深い研究対象です。未知の光と物質の相互作用は私たちのすぐ身近に潜んでいるのかもしれません?!

表面樹脂層をレーザー除去したCFRP.
図 表面樹脂層をレーザー除去したCFRP.
TiO2-SiO2系ガラスのレーザー表面改質による光触媒能の発現.
図 TiO2-SiO2系ガラスのレーザー表面改質による光触媒能の発現.
レーザー除去加工によるマイクロ流路形成(左上)とレーザー表面改質による流路内壁への位置選択的なTiO2光触媒析出(右上、下)
図 レーザー除去加工によるマイクロ流路形成(左上)とレーザー表面改質による流路内壁への位置選択的なTiO2光触媒析出(右上、下).

参考文献

  • "Laser Ablation of Carbon Fiber Reinforced Plastics: Laser-Ionization TOF Mass Spectrometric Study",A. Narazaki, T. Sato, Y. Kawaguchi, and H. Niino, Journal of Laser Micro / Nanoengineering,9 (2014) 59.
  • "Formation of a TiO2 micro-network on a UV-absorbing SiO2-based glass surface by excimer laser irradiation",A. Narazaki, Y. Kawaguchi, H. Niino, M. Shojiya, H. Koyo, K. Tsunetomo,Chemistry of Materials,17 (2005) 6651.

6. レーザープロセス計測・シミュレーション

キーワード: プロセスモニタリング、有限要素シミュレーション

レーザーは、物質へのエネルギー流入を空間・時間的に緻密に制御できるエネルギー源とも言えます。この制御性を一層向上させるため、超短パルスレーザーや新たな波長領域で発振するレーザー、ビーム整形技術などの光源・ビームデリバリー技術の開発が進んでいます。その様な流れの中、プロセス側でも現象可視化のための計測や各種シミュレーション手法の検討が必要になってきます。

我々は、これまでも液中レーザープロセスにおける衝撃波や気泡発生の様子を、シャドウグラフ法により可視化してきました。また、レーザー転写時の原料内の過渡的高温分布の様子を、有限要素法を用いた伝熱シミュレーションにて可視化しメカニズムを検討、パラメーター最適化に利用してきました。

有限要素法によるダブルパルスレーザー転写の伝熱シミュレーション
図 有限要素法によるダブルパルスレーザー転写の伝熱シミュレーション.

参考文献

  • "On-Demand Patterning of Indium Tin Oxide Microdots by Laser-Induced Dot Transfer",A. Narazaki, R. Kurosaki, T. Sato, and H. Niino, Applied Physics Express,6 (2013) 92601.
  • “Transient pressure induced by laser ablation of toluene liquid: toward the understanding of laser-induced backside wet etching”,Y. Kawaguchi, X. Ding, A. Narazaki, T. Sato, and H. Niino, Applied Physics A-Materials Science & Processing,79 (2004) 883.

おまけのコーナー ☆ポーリングしたガラスの2次非線形光学特性

最後に、私が京都大学で平尾一之先生と田中勝久先生(リンク http://dipole7.kuic.kyoto-u.ac.jp/)のご指導のもと取り組んでいた博士論文テーマのご紹介です。

現在も、お問合せいただくので、こちらに(リンク 別ページ)掲載 しておきます。