また時間遅れ(状態遷移)を持つ系をモデル化する場合の
ベイジアンネットワークとしてDynamic Belief Network(DBN)と
呼ばれるものがある[Dean 89].
時系列を扱う確率モデルとして工学的に重要なマルコフチェイン,あるいはその
発展形であり,音声認識や遺伝子情報処理で使われている隠れマルコフモデル
(Hidden Markov Model:HMM)4[Rabiner 93]があるが,このような時間的な遷移をモデル化するために,
DBN はベイジアンネットワークの一部の有向リンクに状態遷移と時間順序の
意味を持たせ,時間軸に沿って必要な回数だけ繰り返し適用することで,
時刻パラメータを持つ有限個の(独立かつ同一分布に従う)
確率変数
の分布を表現する.隠れマルコフモデルは
状態遷移と出力として確率を割り当てるのに対し,DBNは全てのノードに対する
条件付き確率として割り当てる点が異なり,ある時刻の状態は任意の複数のノード
の組で表せる.
他にも無向グラフと有向グラフを組み合わせた連鎖グラフ(chain graph)や, グラフの中に意志決定を行なう計算ノードを導入したinference diagram, decision network[Russell 95]などもベイジアンネットワークのバリエーション として考えることができる.