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ベイジアンネットワークの変形

以上で説明したベイジアンネットワークを実際に適用する場合,変数のとり方によって 様々なバリエーションを与えることができる. 例えばノイズを含むアナログセンサからの観測値などは連続確率変数になるので, 離散確率変数のかわりに連続確率変数でベイジアンネットワークを構成する. この場合には条件付き確率は連続的な関数によって表す必要があり, 適当なパラメータを導入して特定の関数族を仮定することで表現する. とくにガウス分布が用いられることが多く,このように構成したベイジアンネット ワークはガウシアンネットワーク[Geiger 94]あるいは Conditional Gaussian[Lauritzen 89] と呼ばれる. 例えば親ノード$X=x$, 子ノード$Y=y$とすると,条件付き確率は,

\begin{displaymath}
P(y\vert x) = g(x) \cdot e^{-f(x,y)}
\end{displaymath}

のように書ける($f,g$は適当な関数として与える 3).

また時間遅れ(状態遷移)を持つ系をモデル化する場合の ベイジアンネットワークとしてDynamic Belief Network(DBN)と 呼ばれるものがある[Dean 89]. 時系列を扱う確率モデルとして工学的に重要なマルコフチェイン,あるいはその 発展形であり,音声認識や遺伝子情報処理で使われている隠れマルコフモデル (Hidden Markov Model:HMM)4[Rabiner 93]があるが,このような時間的な遷移をモデル化するために, DBN はベイジアンネットワークの一部の有向リンクに状態遷移と時間順序の 意味を持たせ,時間軸に沿って必要な回数だけ繰り返し適用することで, 時刻パラメータ$t$を持つ有限個の(独立かつ同一分布に従う) 確率変数 $\{X_1(t),\ldots,X_N(t)\}$の分布を表現する.隠れマルコフモデルは 状態遷移と出力として確率を割り当てるのに対し,DBNは全てのノードに対する 条件付き確率として割り当てる点が異なり,ある時刻の状態は任意の複数のノード の組で表せる.

他にも無向グラフと有向グラフを組み合わせた連鎖グラフ(chain graph)や, グラフの中に意志決定を行なう計算ノードを導入したinference diagram, decision network[Russell 95]などもベイジアンネットワークのバリエーション として考えることができる.



平成13年1月24日