研究内容

(2)高温超伝導メカニズムの研究

高温超伝導体の研究 高温超伝導体が発見されて10年以上たちますが高温超伝導はまだ解決していません。 解決していないと言うのは、高温超伝導体を説明するような描像がかけていないということです。高温超伝導の研究において解決すべきこととして

  • 超伝導のメカニズムは何か、
  • 異常金属相とはどういうものか、
  • 低ドープ域での相図はどうなっているか、
  • 電子ドープ高温超伝導体の相図はどうなっているか、およびそれがホールドープ系と異なるのはなぜか、

などがあげられます。

高温超伝導に対する引力の起源として最有力であるのが、短距離のクーロン相互作用です。クーロン相互作用は斥力であるにもかかわらず電子間に引力が働くのはどうしてかという疑問が生じますが、d波の対称性をもつクーパーペアーに対してはオーダーパラメーターの符号が変わることにより、クーロン相互作用が引力として働きます。この考えにより、ハバードモデルや三バンドのハバードモデル(d-pモデルとも呼ばれます)に対して、実際にd波のペアーに対して引力的であることを示すと良いのですが、これがなかなか難しいことであります。多くの研究があるにもかかわらず、例えば「(三バンド)ハバードモデルではクーロン相互作用Uによりd波の超伝導相が存在する」と認知されるような状況にはなっていないようです。例えば、量子ホール効果で有名なLaughlinは「ハバードモデルではまだ超伝導になるということがestablishしていない。だから、私は有効 Hamiltonianを考えてその物理的性質を議論しているのだ。」と言っていました。

それではハバードモデルで超伝導は可能でしょうか。これは、現在、未解決の問題です。量子モンテカルロ法による計算によると、二次元ハバードモデルにおける超伝導相関関数はクーロン相互作用が働いても増大しないようであり、むしろ抑えられているようでもあります。一方、相互作用Uが小さいとして摂動計算を行うとd波の超伝導状態が解として求まります。これは超伝導の可能性のあることを示しています。Uがある程度有限の値になっても正しいかどうかは大きな問題です。実際に超伝導になるかどうかはほかの秩序状態との競争で決まることになると考えられます。

超伝導相が存在するかどうか確かめるためには、可能な秩序状態との比較をモンテカルロ法で行なう必要があります。我々はハバードモデル、d-pモデルに対する変分モンテカルロ計算により、実験値とほぼ一致する超伝導凝縮エネルギーが得られることを示しました。なお、正方格子で次近接トランスファーがゼロであるモデルに対する詳しい変分モンテカルロ計算によると、サイズを大きくしていくと超伝導凝縮エネルギーはかなり小さくなり、量子モンテカルロ法の結果とコンシステントであると考えています。 現在、変分モンテカルロ法の計算をより進めて、量子モンテカルロ法により電子状態を調べています。