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大木研究室
第8回  物理選別の難しさ ④ ~理想的な技術2~

ロボットやAI(人工知能)の発展は目覚ましく、リサイクル工場にも少しずつ導入されてきています。ただ、残念ながら、リサイクル工場では、予期できないさまざまな物から価値の高い物を選り分ける作業が必要なため、現状ではこれらも万能ではないことは前回述べました。もう一つは処理量の問題があります。建設廃材や自動車のボディなどは、1つ1つ選別しても相当な量が処理できますが、サイズが小さくなるにつれ、大量処理が難しくなります。このように対象物を(ロボットやAIを使って)1つずつ選り分ける技術には、一般に「ソータ」と呼ばれる種類の選別装置がありますが、ここでは、これを「個別選別技術」と呼ぶことにします。粒子を個別に1粒ずつ選り分ける技術という意味です。 技術的には数mmサイズの粒子を選別できますが、1粒子ずつ選別するので、サイズが小さくなると大量処理が難しくなります。お米の異物除去など、決まったものを選別する単純な作業には利用されていますが、リサイクル工場ではさまざまなものを選別する必要があり、1つ1つ詳しく分析する必要があるので、ペットボトルくらいのサイズのものを対象とするのが一般的です。

一方、安く大量に選別するには、昔から利用されている「集合選別技術」が適しています。たくさんの粒子の集合体をまとめて選り分ける技術という意味です。 磁石で鉄などを回収する磁選機などが代表的な装置です。装置の値段も個別選別技術に比べて一般に安く、小さな粒子でも大量処理できるところが魅力ですが、1粒ずつ見極めている訳ではないので、正しく使わないと精度良い選別ができません。高価な金属ほど製品の中で小さなサイズで利用されますので、数cm以下、できれば1mm以下のサイズの粒子も精度よく大量に選別できることが、未来の理想的な物理選別には必要となります。

集合選別技術を利用するとしても、商売として安く選別するには、装置に工夫が必要となります。広く科学技術を見たとき、スマートフォンや自動車などのように、「高機能な製品」を新しく開発するときには、さまざまな機能を足していくことが一般的です。一方、リサイクルで利用する物理選別装置は、装置や運転にかかるコストを安く、かつ、ずっと使える高精度装置である必要があります。このため、不要な部分は全てそぎ落とし、本当に必要な機能を究極に高めていくことによって、高精度化を図ることが重要となります。これは、ロボットやAIの開発とは少し違い、ありふれた原理のうち、人類がこれまで選別装置やそのコントロールに利用してこなかったものを見つけ出し、それを利用できるようにすることが開発のポイントとなります。

第8回イラスト
    

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