第20回 選別技術で何でも回収できるのか?
これまで選別方法について説明してきましたが、今ある様々な方法を駆使すれば、どんな素材でも回収できる訳ではありません。それには、技術的な面と、儲かるかどうかが関係してきます。第16回で示したように、水平リサイクルするには素材を細かく種類別に選別することが必要です。ただ、選別した後、どんな純度でも買ってくれるわけではありません。素材の種類によって買ってくれる純度があり、それ以上の純度になるまで選別しないと売れません。結局、買ってもらえなければ、選別したことが無駄になってしまいますね。下の図は、いくつかの素材を例に、およその価値と、水平リサイクルをする原料にするため、どのくらいの純度まで選別しないといけないかを示しています。
第15回で、金(きん)に代表される貴金属類は「一定以上の濃度なら、特別な選別をしなくても(現在でも)水平リサイクルできます」と書きました。例えば、金なら、10ppm位の純度でも買ってくれて、金の延べ棒にすることができます。10ppmというのは10万分の1の純度ということです。99.999%金以外で、0.001%が金である状態が10ppmです。一方、高価なレアメタルの1つであるタンタルの場合、30%位の純度でないと買ってもらえません。さらに、アルミニウムや鉄、プラスチックをさらに種類別に選別しても、それらが限りなく100%に近い純度でないと買ってもらえません。これらの違いは簡単にいうと、各素材の価値に関係しています。価値は少しずつ変動しますが、だいたいの値で示すと、同じ重さなら、タンタルは、アルミニウム・鉄・プラスチックの100倍位、さらに金はタンタルの1000倍位の値段で売れます。ゴミの中に含まれている重さが違うので、100倍、1000倍のお金が入ってくる訳ではありませんが、ものすごく差がありますね。つまり、ゴミの中に金が入っていれば、選別でそれほど純度を上げなくても高く売れるので、今でも水平リサイクルができています。タンタルになると、金の1/1000の価値なので、あまり選別にお金を掛けられませんが、なんとか30%位なら技術的には選別することができます。現在、ほとんどリサイクルがなされていないのは、確実にタンタルが使われているゴミを集めるのが大変だからです。アルミニウム・鉄・プラスチックになると、タンタルの更に1/100の価値なので、非常に安く選別しなければならない上に、100%近い純度にする必要があります。PETボトルのようにそれだけを集めるルールがあれば水平リサイクルができますが、電気製品など様々な素材が混ざったものからこれを回収するのは大変で、いまだ技術ができていません。このように技術的に選別できるかどうかと、選別をして儲かるかが素材ごとに違うために、様々な素材の水平リサイクルを促進することは難しいのです。