第2回 真・物理選別学とは (後編)
「塩」と「りんご」では「選別のしやすさ」が異なり、簡単な選別で、必要なものを高い純度で回収できれば、捨てられずに利用されると言いました。リサイクルによって資源を循環する場合も同じです。「資源」とは社会に利用できる物しか言いません。例えば、学校のグランドにも「金(きん)」が必ずあります。ダンプカー何台分もの土を掘り起し、これを丁寧に選別すれば、数千円程度の「金(きん)」は回収できるかもしれません。しかし、それを回収するのには何十万円もかかるので、誰も回収はしません。社会に利用できる物ではないので、学校のグランドにあるわずかな「金(きん)」は「資源」とは言いません。一方、捨てられた製品の中には、もう一度利用できる金属があり、都市の中にある鉱山という意味で「都市鉱山」と呼ばれています。そして、都市鉱山にはさまざまな金属が何トン含まれているとか、何億円分あるとか言われます。これを聞いて、全てが「資源」として回収できると誤解する人もいますが、塩やグランドの金(きん)の例のように、それがどんな「状態」であるのかが重要となります。そしてこの「状態」とは、簡単に選別して必要なものを高い純度で回収できるのか?回収するのにどれだけお金がかかるのか?ということです。
つまり、リサイクルによって資源を循環して利用するには、容易に「選別」できるかどうかが技術的な鍵となります。選別が難しい物を、お金をかけずに選別できる技術が生まれれば、より多くの物を「資源」としてリサイクルし、循環利用することができます。リサイクルで高度な選別技術が利用されるようになったのは、ごく最近のことなので、学問的には未だ十分な整理ができていません。固体の粒子同士を選り分ける操作を総称して「物理選別」と呼びますが、筆者は、未来の資源循環を達成するために整理した新たな学問を「真・物理選別学」と名付けました。このコラムでは、「真・物理選別学」の要点を、中学生にも理解できる言葉で少しずつ解説していきます。