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大木研究室
第16回  いよいよ選別~何を回収するか2~

前回、価値の高い回収物として、貴金属とレアメタルについて触れました。では、それ以外の物に、選別によって水平リサイクルできるようになるものはないのでしょうか?以前お話ししましたが、ほとんどの金属や素材が「カスケードリサイクル」しかできていないので、これらの中から、将来「水平リサイクル」できるようになるものがあるか?ということになりますね。それ以外の物は、貴金属やレアメタルに比べると値段の安いので、大量に集めないとリサイクル会社の商売になりません。つまり、例えば、鉄やアルミニウム、プラスチックのように、製品として大量に使われているものが、候補になりますね。今回は、これらのリサイクルについてお話したいと思います。

鉄やアルミニウムは、純粋な金属として使用されることはあまりなく、多くは、性能の良い材料とするために、他の元素を少しだけ混ぜて使われます。このようなものは合金と呼ばれます。合金には沢山の種類があって、それぞれに混ぜる元素が少しずつ違います。料理に例えると、ご飯にすし酢を混ぜてお寿司を作ったり、ご飯にケチャップを混ぜてオムライスにしたりするのと同じように、目的に合わせて混ぜる元素変えるのです。沢山の種類あるので、リサイクル工場に運ばれてくるときには、様々な鉄の合金が鉄スクラップとして、様々なアルミニウムの合金がアルミスクラップとして集められます。様々な合金が混ざると、元のような性能の良い材料にすることはできないので、鉄筋や自動車のエンジン(アルミ)など、少し性能が落ちても十分に使える用途に使ってきました。これらはとても効率の良い使い方ですが、元の高性能な製品には戻らないので「カスケードリサイクル」になります。これらを水平リサイクルするためには、合金別に分けて回収するか、混ざった物を合金別に選別する必要があります。

一方、金属材料は「無機物」で、元素の特徴ごとに材料利用されますが、プラスチックは「有機物」で、元素としては炭素、水素、酸素などで作られています。元素自体には材料としての価値はなく、分子の構造に価値があります。金属における合金と同じように、プラスチックにも分子構造の違いで沢山の種類があります。ごみを捨てる時に分別するPETボトルは、「(P)ポリ(E)エチレン(T)テレフタレート」というプラスチックの1種です。PETの中にも本当は幾つかのバリエーションがありますが、PETボトルは、同じ分子構造のプラスチックで作るように決めたので、これだけを集めれば、またPET素材に水平リサイクルすることができます。

このように、鉄やアルミニウム、プラスチックは、その中に様々な種類が存在しますが、同じ種類だけを集めれば、水平リサイクルできる可能性が高くなります。お寿司とオムライスが混ざってしまうと、もうお寿司にもオムライスにもなりませんが、同じオムライスだけを保存しておけば、これらを混ぜて温め直せば、またオムライスとして食べられますね。PETボトルのように、既に分別回収されているものもありますが、これらは全体からするとほんの一部です。このような回収のされ方が進めば水平リサイクルも進みますが、沢山の種類がある合金やプラスチックを、細かく分別することはすごく大変です。特に製品の中の部品として使われている材料は、種類ごとに分別回収できません。その場合には、リサイクル工場で破砕して選別することが必要ですが、残念ながら、このような選別はとても難しく、まだ技術的に出来上がっていません。この製品にはどんな種類の合金やプラスチックが使われているか?について、細かな部品に至るまで非常の多くの「情報」が必要になります。現在のリサイクル工場では、1つ1つの製品の細かな情報が分からないまま選別処理されていることが多いですが、将来は、これらの情報を把握できるようにする必要があります。また、製品を作る段階から、リサイクルすることを考えて作るなど、社会全体で工夫をしてゆくことが重要となります。

第16回図

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