第15回 いよいよ選別~何を回収するか1~
うまく単体分離ができたら、いよいよ選別です。では、単体分離された後、廃製品中の何を選別して回収したら良いのでしょうか?
製品にどんな金属や素材が使われているかによりますが、もし入っているなら、まず回収するのは、「貴金属(金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム)」です。この中では銀の値段が少し安いですが、それ以外は1gで数千円~数万円しますので、ほんの少し入っているだけでも価値があります。比較的薄い状態で化学プロセスで回収しても採算がとれるので、一定以上の濃度なら、特別な選別をしなくても(現在でも)水平リサイクルできます。濃度が薄い場合は簡単な選別をしますが、パソコンなどの電子基板や自動車のマフラーに付いている触媒などは、手で外して回収されることが多いです。また、小型の製品では、貴金属を多く含む廃製品と、そうでない廃製品を分ける場合もあります。電子基板に搭載されているICやメモリーだけを回収すれば、貴金属の濃度を高くできますが、逆に、それ以外の部品の貴金属濃度が薄まってしまいます。濃度が高いほど価値が上がりますが、薄まった方の貴金属が売れなくなるほど低濃度になってしまうと、全体の価値が下がってしまうので、計画的に実施する必要がありますね。
次に価値があるのが「レアメタル」と呼ばれる金属です。レアメタルというと英語みたいですが、1980年代に日本で名付けられた用語です。国によって、呼び方や、含まれる金属の種類が違います。日本でも当時は31鉱種、47元素がレアメタルでした。鉱種という言い方が特殊ですが、レアメタルの中に「レアアース」と呼ばれる元素群があります。鉱山ではレアアースと呼ばれる17の元素が一緒に採掘されるので、1鉱種としてカウントします。他の30種は1元素1鉱種なので、31鉱種=47元素となります。ところが最近、レアメタルが34鉱種、55元素になりました。「レアメタル」は、「元素」のような科学用語でなく政策的な用語で、昔から使われている金、銀、銅、鉄、アルミニウムなどの金属以外で、高度な製品を作る上で必要となる金属というような意味で使われています。レアメタルには、金と銀を除く貴金属も「白金族」という呼び方で含まれていますので、分類が少し複雑ですね。レアメタルは漢字で「希少金属」と書くので、地球に少ししかないと思われがちですが、必ずしも資源量が少ないわけではありません。鉄や銅に比べると使われる量も少ないので、「枯渇」してしまう(使いすぎて鉱山がなくなってしまう)心配はそれほどありません。ただ、使われる量が少ないということは、数少ない国だけが生産すれば済んでしまいますね。残念ながら日本にはレアメタルの鉱山はありませんので、生産国が何らかのトラブルで、生産量を減らしたり、休止したり、輸出しなくなると、一時的にその金属が輸入できなくなってしまいます。多くのレアメタルは、さまざまな素材や部品にほんの少しずつ使われますが、輸入できなくなると、これらが使われている電子部品、モータ、電池などが生産できなくなります。すると、これらを使う自動車やパソコンも作れなくなり、工場が止まってしまいます。少ししか使われないけど、製品を作る上で必要不可欠という意味で、レアメタルは「産業のビタミン」なんて呼ばれています。将来、廃製品をリサイクルして、レアメタルが国内から回収できるようになれば、工場が止まる心配もなくなりますね。
レアメタルの種類については、こちらのWebページ[元素周期表とレアメタル](pdf,711KB)を参考にしてください。