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大木研究室
第17回  選別方法の分類 ① ~個別選別と集合選別~

前回、水平リサイクルをするには、さまざまな素材が混ざってしまうと選別が大変だというお話をしました。ただ、過去にお話ししたように、解体や破砕でうまく単体分離できれば、全部は無理にしても、選別によって一部を水平リサイクルできるチャンスはあります。ではどうやって選別するのでしょうか?今回は、選別方法について、簡単にお話しします。

選別方法には、大きく分けて個別選別と集合選別という方法があります。個別選別は、単体分離された素材を1つずつ選り分ける方法です。ベルトコンベアの上に、素材の塊が1つずつ流れてきて、それをカメラで撮影して色や形を見分けたり、さまざまなセンサーを使って、素材の特徴を分析します。その後、これらの分析結果に基づいて、回収するものと回収しない物に分けます。分け方は、ロボットの手が掴んで分けたり、小さいものはエアで飛ばすなど、幾つかの方法があります。日本ではこのような装置を総称して「ソータ-」と呼んでいます。選別とは、選んで分ける(別ける)と書きますが、ソータの特徴は、「選ぶ」機能と、「分ける」機能が、別々になっている点です。このため、選ぶ機能には、市販されている多くのセンサー(分析装置)が利用できるので、粒子のさまざまな性質を利用して分けることができます。ただし、1つずつ分けるので大きな塊は問題ないですが、数mm以下の小さな粒を分けるのが苦手で、このようなものは、たくさんの量を選別することも難しくなります。

一方、集合選別は、昔から使われている方法で、例えば「ふるい」で大きさごとに分けたり、磁石で鉄だけを回収するなども集合選別の1つです。選別するということは、素材(粒子の種類)の違いによって、回収したい物と、回収したくない物を、別の場所に移動させることですよね。例えば、スチール缶(鉄)とアルミ缶が混ざっているところに、大きな磁石を近づけたらどうなるでしょう。ロボットの手が掴まなくとも、スチール缶だけが勝手に移動して磁石にくっつきますよね。目には見えませんが、磁石の周りには磁力線というのがあることは学校で習ったかもしれません。このような環境を「磁場」と呼んでいますが、日常的な環境で混ざっていた缶に磁石を近づけ、磁場という特殊な環境を作ると、その環境の中で居心地の良い状態になるよう、スチール缶だけが勝手に移動するんですね。このときの移動させる力を磁力と言い、磁力で選別する装置を「磁選機」と呼びます。このように集合選別は、個別選別と違って、「選ぶ」と「分ける」が同時に起こることが特徴です。つまり、素材の性質の違いによって、粒子が勝手に移動する環境を作る必要があるので、利用できる性質は磁性や比重など、それほど多くありません。ただし、たくさんの塊(粒子)を同時に選別でき、装置によっては非常に小さな粒子も選別できるという利点があります。効率よく選別するには、個別選別と集合選別を上手に使い分けることが重要になります。

第17回図

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