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大木研究室
第12回  まずは単体分離させる

本コラムでは、真・物理選別学で伝えたいことの概要や、将来の戦略的都市鉱山のあり方などを述べてきました。ここからはしばらく、趣向を変えて、真・物理選別学が担う技術の中身についてお話したいと思います。

まず、第4回で示した「物理選別プロセスの基本的な流れ」の図を思い出して下さい。以後の説明を理解する上で、この流れを頭に入れておくことが重要です。家庭で使用した電気製品など、「捨てられた製品」は、さまざまな種類の金属が組み合わさってできています。さまざまな成分(金属)が組み合わさってできている粒子を「片刃(かたは)」と言います。これを金属の種類ごとに選別して、化学プロセスの原料とするためには、まずは、1つの粒子が1つの成分(金属種)になるように、バラバラにしなければなりません。これを「単体分離」と呼ぶことは第4回でも説明しました。片刃である粒子(製品も1つの塊なのでここでは粒子と呼びます)であるものを単体分離するには、何らかの方法でバラバラにしなければなりません。1番確実なのは手で解体する方法ですが、コストがかかるため、非常に大きな物、高価な物、危険な物などに使われる方法です。これも、いずれは自動的に、かつ大量に解体できると良いのですが、一部の物を除いて自動で解体するのは難しいのが現状です。そこで、多くの場合は、破砕機という機械で壊していきます。さまざまなタイプの破砕機がありますが、イメージとしては、料理で使うミキサーのような構造のものと思ってください。

破砕機によって、片刃粒子を単体分離させる様子を、図のような、チョコとプレーンが市松模様になったクッキーを例えに説明します。破砕前のクッキーは、チョコとプレーンが組み合わさってできている粒子ですから、これをうまく破砕して、チョコだけの粒子とプレーンだけの粒子にすればよい訳です。理想は、上段の「〇」で示したように、チョコとプレーンの境目でうまく切れて、それぞれ1種のクッキーからなる4つ粒子に単体分離することです。このように破砕されることを「選択破砕」などと言いますが、人やロボットがナイフで切らない限り、ミキサーのような装置でこのようにすることは難しいですね。なお、単体分離とは、分離といっても粒を切り分けることで、まだ、沢山の粒子が混ざった状態ですから、この後に選別をする必要があります。ただ、このように単体分離していれば、この後の選別はうまくいく可能性が高くなります。一方、下段の「×」の例では、破砕されてもそれぞれの粒子は片刃のままですので、その後に選別しても、チョコとプレーンをキレイに分けることができません。もっと粉々にすればいつかは単体分離しますが、粉々にしてしまうと、この後にチョコとプレーンを選別するのが大変難しくなることは、容易に想像できると思います。そのため、軽く破砕をして、粉々にならないように注意しながら、なるべく上段の「〇」の状態することが重要です。非常に単純な操作ですが、その後、うまく選別できるかどうかが決まる最も重要な操作の1つです。また、未だどのように破砕すれば理想になるのかが科学的に解明されておらず、将来の都市鉱山開発にとって大きな課題となっています。

第12回図

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