第11回 リサイクルに関するもう1つの分類
リサイクルには、「水平リサイクル」と「カスケードリサイクル」があることをお話ししてきました。これは、リサイクルしたものの価値による分類です。一方、何を対象にリサイクルするかによっても、別の分類をすることができます。1つは工場の中で出てくる端材をもう一度原料に戻す「工程内リサイクル」、もう1つは皆さんが製品を捨てたあとに行う「通常のリサイクル」です。これは、新聞やテレビ、さままざまな資料などでも区別されないことが多いのですが、実は大きな違いがあります。日本語でしっくりする用語がないのですが、英語の「プレコンシューマリサイクル」(工程内リサイクルのこと)、「ポストコンシューマリサイクル」(通常のリサイクルのこと)というのが、言葉が対称になっていて、意味的にも一番ふさわしいと思います。
プレコンシューマリサイクルは、製品の元になる材料を作る工場で出てくる端材などを、もう一度原料に戻すものです。家でクッキーを作るとき、型で抜くと周りの生地が残りますよね。形は不ぞろいですがクッキーと同じ生地ですから、捨てずにもう一度練り直して、そこからまた型を抜くと思います。ごく簡単に言えば、これが代表的なプレコンシューマリサイクルです。銅や銀の板を打ち抜いてオリンピックのメダルを作る際にも余白ができますので、クッキーの例と同じように再利用します。一方、ポストコンシューマリサイクルは、これまでお話ししてきたリサイクルのことで、皆さんが製品を使用し、壊れたりして捨てた後に、そこに使われていた素材をリサイクルすることです。
この2つの大きな違いは、まず、リサイクルする前の薄まり方にあります。プレコンシューマリサイクルでも、製造の過程で不純物が混ざることがあるので、物理選別が必要な場合も多いですが、それでもかなり濃い状態からのスタートになります。一方、ポストコンシューマリサイクルでは、スマートフォンだけを集めてもそこから金(きん)を回収するとなるとかなり薄まっていますが、さらにさまざまな製品が混ざっていれば、とても薄まった状態からスタートしなければなりません。もう1つの違いは、消費者、つまり皆さんが使う前か、使った後かの違いです。プレコンシューマのプレは「前の」、コンシューマは「消費者」という意味で、ポストコンシューマのポストとは「後の」という意味です。プレコンシューマリサイクルは、一度も社会に利用されていないものが対象で、言い換えると、工場における「原料の節約」の役割を果たします。これも重要な役割ですが、リサイクルという名前がついているものの、学校で習う3R(リデュース、リユース、リサイクル)でいえば、リデュースに近いものです。ポストコンシューマリサイクルに比べると実施しやすいので、プレコンシューマリサイクルはかなり進められています。ただし、これができたとしても、皆さんが使用したスマートフォンが再びスマートフォンの原料となるわけではないので、「資源循環」とは呼べません。戦略的都市鉱山により資源循環を進めるには、「ポストコンシューマリサイクル」において「水平リサイクル」を進めることが重要となるのです。