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大木研究室
第10回  廃製品はゴミではない

日常生活や企業の工場などから、ありとあらゆるものがゴミとして捨てられますが、まずは、これを正しく処理して環境を汚さないことが重要です。その上で、「水平リサイクル」できるものを高度に選別して循環利用できるようにするのが、真・物理選別学が目指すものになります。ここで、第5回でお話しした「コナンくんの犯人捜し」の例を思い出してください。犯人が建物の中にいるうちは見つけやすいですが、市内のどこかに逃走してしまう(非常に薄まった状態になる)と、捕まえるのが大変になるというお話です。リサイクルを商売にするためには、安く選別することが必要ですが、重要な金属がすごく薄まった状態からリサイクルすると、とてもお金(コスト)がかかってしまいます。

環境を汚さないことだけを考えれば、ゴミを減らすために燃やしたり、カスケードリサイクルを進めるのが比較的容易だということは前回述べましたね。まとめて回収して、まとめて処理する方がコストがかからないので、まずはそのような方法から始まりました。その後、なるべくリサイクルしやすいように「分別回収」を進めていますが、それでも全体からみれば、まだまだ薄まった状態であり、図の左側のように水平リサイクルできているものはごくわずかです。また、「環境を汚さない」という考え方も、年々変化しています。ゴミが道路に散乱していたら、臭いですし、虫やネズミなども発生し、衛生的にも美観的にも良くないですよね。それで、ゴミを回収してきたのですが、日本は人口の割に国土面積が小さい国なので、今度はゴミを埋める場所がなくなってきました。そこで、なるべく燃やして量を減らす努力をしてきました。燃やすと有害ガスが発生するものもあるので、燃やし方の工夫もしてきました。このように初めは、皆さんの街の環境を汚さないことが中心でした。ただ、最近は、燃やすとCO2(シーオーツーと読みます。二酸化炭素のことです。炭酸ガスとも言います)が発生して、これが地球の温暖化を促進してしまうことが懸念されています。街に住む人たちが病気になるわけではないので、少し優先順位は下がりますが、なるべく燃やさずにCO2の発生量を減らして、将来も人が住みやすい地球環境を守っていきましょうという考えが世界的に起きています。

なるべく燃やさずにゴミを減らすとなると、何かに利用しなければなりません。実はカスケードリサイクルの国内での利用先はいっぱいになってきています。つまり、これからは、利用先がたくさんある水平リサイクルを増やしていかなければなりません。すごく薄まった状態からこれをするとコストがたくさんかかりますが、少し濃い状態の廃製品を集めれば、もはやこれはゴミではなく、さまざまなものを作る原料になれる可能性があります。薄まったゴミを処理する廃棄物処理は今後も重要ですが、その中から濃いものを分けて、図の右側のような「戦略的都市鉱山」を実現するには、高度な選別技術でどんなものが原料として水平リサイクルでき、それがどの廃製品に入っているかを考えていくことが必要になります。

第10回図

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