第3回
辻褄合わせの概念と真理 ①
~物理選別プロセスの基本的な流れ~
筆者は、選鉱・選炭技術に始まり、近年は都市鉱山(リサイクル)における物理選別技術の開発に従事してきた。このような資源処理における物理選別の役割を考えたとき、これらに共通するのは、対象物の不均一性と多様性である。選別対象の粒子のばらつきが非常に大きく、特に都市鉱山においては、その経時・経年変動が著しく、何が投入されるのかの詳細が不明な状況で、目的物の選別・回収を強いられることが多い。これが主として粉体工学などで扱う農工業製品の選別とは異なる点であり、実用的な理論体系化を困難にしている要因でもある。リサイクル工場で利用可能な物理選別技術の実施例などは紹介されているが、これを体系化した物理選別学の構築は全く手つかずと言っても過言ではない。対象物の不均一性と多様性という点において、幾多の問題は抱えつつも、リサイクル用途に最も近い学問体系は選鉱学であろう。その個別の問題については後に詳述するが、まずは入口論として、現状の選鉱学の構造的問題点と、真・物理選別学へと発展させる動機について、今回以降、何回かにわたってその概要を述べる。
物理選別プロセスの基本的な流れ
物理選別では、あらかじめ用意された混合粒子群を、1つの選別機に投入して選別を完了する場合もあるが、多くは何段階かの工程を経て選別産物が回収される。そのパターンは、対象物や目的に応じて多種多様であるが、まずは、今後の話を理解しやすくするため、物理選別プロセスの単純化した基本的な流れを図1.1.1に示す。
図 1.1.1 物理選別プロセスの基本的な流れ
リサイクル工場の対象となるのは、多くが1 粒子中に多成分が混在した複合粒子(片刃粒子)群である。最終的には各成分の回収産物を得るのが目的であるが、まずは、1 粒子が 1 成分で構成(単体分離)された状態にするため、粉砕工程にかける。粉砕産物を図のように単体分離した状態にするのは極めて困難であるが、粉砕によってなるべくこの状態に近づけることを目指す。次に、選別工程に移るが、最終的な成分ごとの選別は、対象物のサイズによって変える方が精度向上が期待できるため、通常は、あらかじめサイズを揃えておくのが(整粒工程)肝要である。概ね1mm 以上のサイズであれば、空気中で選別する乾式選別の適用が可能であり、概ね1mm 以下の粒子の選別を行う場合には、コストはかかるが、水中で選別する湿式選別の適用が必要となる。現実には、各種選別工程は更に多段階で行われることが多いが、次回以降の解説を理解する上で、まずは、この基本的な流れを頭に入れていただきたい。