第27回
選別装置の選択 ⑤
~個別選別と集合選別 4 ~
個別選別と集合選別 4
今回は、集合選別の分類について解説する。ここ半世紀ほどで発展してきた個別選別に対し、集合選別機の利用は、記録が残っている範囲で見ても中世にさかのぼる。おそらく、現代と類似の原理を用いた手作業による選別操作は、太古から行われてきたであろう。集合選別機は特定の粒子性質に着目し、その性質を基準に選り分けようとする装置である。粒子運動に差を生じさせなければならないため、運動差が生じない粒子性質は、違いがあっても選別には利用できない。また、基本的には化学変化させずに固体のまま選別する方法であるので、融点や沸点、溶解や燃焼など「体」の変化を伴う性質は利用できない。さらに、砕けやすさのように選択粉砕を誘発する性質も、選別自体は粒子サイズの違いで行うので、集合選別機の利用物性には含まれない。長い歴史を持つにも関わらず、現在、集合選別に利用される主な粒子物性は、粒子の「外形」であるサイズや形状、「バルク物性」である密度(比重と呼ぶことが多い)、磁性(粒子の磁化率)、導電性、粒子の「表面性質」である濡れ性(水や空気との親和性の違いを利用した浮選)などに限定される。最も新しい「浮選」でさえ、その粒子性質を利用した原理が見出されたのは150年以上前のことである。「特殊な場」を提供する選別機の原理は、近年も新たにいくつか提案されているが、利用する「粒子性質」自体を新たに見出した例は、「浮選」が最後の例といってよい。集合選別機には数百に及ぶ種類があり、湿式法/乾式法や適応サイズ別に分類することも多いが、ここでは、利用できる「粒子性質」に基づいて、集合選別を大きく分類してみた(図4.1.5)。
図4.1.5 利用する主な粒子性質による集合選別の大分類
粒子性質の数え方にもよるが、集合選別では、基本的にはこの7つの粒子性質しか利用できない。少なくとも現状においてはそうである。各粒子性質の下には、それを基準に選別することを目指した選別法(装置)が記してある。比重選別が3つの性質に跨っているのは、第24回で記した「特に、粒子のサイズが粒子運動に及ぼす影響(選別したい物性での選別を阻害)が大きい」ことに関連するが、これは別の機会に紹介する。数多ある集合選別機は、これらの選別法のどれかに分類されるか、これらのハイブリッド機と考えて良い。
リサイクルでは、金属や材料の種類ごとに選別することが目的であるが、集合選別機の選別の基準はあくまで粒子性質の違いに基づく粒子運動の差である。したがって、回収したい金属や材料の種類と、粒子性質による粒子運動がどう関連するかを認識しておくことが重要となる。筆者は、未知の粒子群を選別する前には、対象の粒子群がどういう成分で構成され、どんな粒子状態であるのかを必ず分析する。これを「キャラクタリゼーション」と呼んでいる。その際にまず確認するのが単体分離しているかどうかであるが、同時に、どの粒子物性を利用して選別すると、何がどのくらい選別できそうかを推定する。「電子素子」に限って言えば、これらを網羅的に計算し、使用する選別機群や各選別機の運転条件と選別結果を精度よく推定できる計算ソフトウエア「AESS」を開発している。ただし、一般的には各種の分析や予備選別の結果から、選別の可否や適切な選別方法を人が推考することになる。推考の手順に決まりはなく、体系化もされていないので、いきなり選別機で試験をするケースが多いが、極めて不合理である。筆者の「キャラクタリゼーション」方法について、細かく書き出すと次第にAESSのアルゴリズムに近づき、本コラムでは書ききれないが、ごく簡単な考え方について次回に解説する。