第14回
なぜ単体分離が重要なのか ②
~単体分離のされ易さ~
単体分離のされ易さ
単体分離の状態によって選別の良し悪しが決まるため、単体分離をどのように捉えてその状態を分析し、評価すべきかが重要であるが、その結論については、筆者自身も現在検討中であり、ひとまず先送りさせていただきたい。ここでは、片刃度の偏りを含む、単体分離に影響する粒子側の因子(単体分離のされ易さ)について、簡単に紹介する。
単体分離は複合粒子の「状態」を示す指標であるが、それを分析する意義は、理想的な物理選別を成し得る粒子状態であるかということにある。もう少し踏み込めば、①「粉砕前の状態」がどれだけ単体分離しやすいかと、②「粉砕後」どれだけ単体分離されたかが評価の対象となる。前回述べたように、混ざったものを分ける物理選別は、対象物を不均一化させる作業であり、単体分離は、選別前に、まずは「粒子状態」を不均一化させておく工程といえる。図2.2.2に示すX,Y,Zの3つの粒子は、前回示した図のそれぞれ1つの粒子を示していると考えてほしい。いずれもA:B成分比が1:1である。つまり、各粒子の片刃度は同じであるが、これらを更に破砕などで細分化するとしたとき、つまり①の評価をするとき、「単体分離され易さ」は同じだろうか?例えば、X,Y,Zが折り紙だとする。A/B成分の境界に沿って切り、Aの紙、Bの紙に単体分離させると考えても、単体分離のされ易さはX>Y>Zであることは理解できよう。カッターで紙を切るような理想的な単体分離法があれば、A,Bのサイズ(ドメインサイズ)に切れば単体分離するが、実際には不完全な単体分離法(破砕法)を用いることになり、ドメインサイズよりも小さくしなければ単体分離度が0%より大きくならないことも多い。細分化には多くの粉砕エネルギーがかかるとともに、選別に適用できる粒径にも下限があるため、必ずしも十分に単体分離されるまで粉砕できるわけでない。このように、ドメインサイズが小さくなると、より細かく粉砕しなければならず、単体分離させることが難しくなるというのが、最も基本的な考え方である。
図2.2.2 ドメインサイズによる単体分離され易さの違い
一方図2.2.3は、図2.2.2で示した「粒子Y」のB成分濃度が異なるケースを示したものである。Y2、Y3のようにA成分が多く、そのドメインサイズが明確に示せない場合、A成分をマトリックスと呼んだりするので、これらは「Aマトリックス中のB成分の分布状態が違う」という言い方もできる。これらを粉砕して②の評価をすることを考える。もし、ドメインサイズと同等以上のサイズで、ほぼ均一に粉砕されてしまったとしても、粉砕後の粒子のB成分濃度は粉砕前の濃度とほぼ同じになる。つまり、元のB成分濃度が高いほど片刃度の高い粒子ができ易くなるが、当然のことながら、これは不均一化が促進され易いということにはならない。前回、「A成分濃度が90%や10%の片刃粒子が多数存在していれば、相応の選別効果が期待できる」と記したが、これは元の濃度に対する偏在性を意味するのであって、単に片刃度の高低だけでは評価できない。これに対し、分布に極端な偏在性を持たせたのが図2.2.4である。YaとYbは、B成分のドメインサイズも濃度も同じ粒子であるが、Ya粒子中のB成分は図2.2.3の「粒子Y」と同じ濃度で密集している。これに①の評価をすると、この部分は「粒子Y」と同じ濃度の片刃粒子が得られると期待できるので、Ybと比べて不均一化され易いといえる。
図2.2.3 B成分濃度の違いによる単体分離され易さの違い
図2.2.4 Bドメイン分布の違いによる単体分離され易さの違い
以上、現状では断片情報の提示に留まるが、粉砕前後の「対象物の状態」という点だけをみても、単体分離のされ易さを知るには、その状態をどのように解釈するかが重要となり、評価手法の整理と確立が待たれるところである。