Stix&Layne(1996)

by Isoji MIYAGI @ Geological Survey of Japan, AIST

Gas saturation and evolution of volatile and light lithophile elements in the Bandelier magma chamber between two caldera-forming eruptions. Journal of Geophysical Research. 101: 25181-25196. (my_id=G946)

目次

背景

巨大噴火の準備過程は?

Bandelierマグマ溜まりは1.608 Maと1.225Maの二度,カルデラをつくるような噴火をしている. Cerro Toledo流紋岩はそれら二度の噴火の間に噴出しているから,マグマ中の揮発性成分が383千年の間にどのように変化したかを知るのに適している.Cerro Toledo流紋岩(降下火砕物)の噴出量は少ないので,Bandelierマグマ溜まりの頂部をサンプリングしたことになる.マグマ溜まりの頂部は揮発性成分に飽和していると思われ,過飽和なフルイドとメルトの間の元素分配に関する情報が得られるだろう.

したこと

Cerro Toledo流紋岩の斑晶ガラス包有物および石基ガラスの揮発成分を分析した.


噴出物の名称と年代 (Table 1より)
ユニット 年代
6-12 1.225
6-8 1.212
15-11 1.376
6-2 1.474
15-9 1.536
15-8 <= 1.593

分析結果

Li, Be, Bは時間とともに濃度が増大していることがわかった(単調増加).F濃度は3.6倍に増加.Cl濃度は2.5倍に増加.これに対し,H2O濃度はほぼ一定だった.

重要な点:

  1. フルイドに濃集しやすい元素(H2O,Cl)の濃度はあまり増加していない
  2. Cl/Be比やCl/B比は,時間とともに減少している.
  3. 斑晶ガラス包有物のCl濃度の最大値(2900-3000ppm)は,想定条件における飽和溶解度とほぼ同じ.
  4. Clの分配係数は時間とともに変化.15-8, 15-11までは過飽和なフルイドへの分配は少ないが,6-8ではフルイドに大きく分配されている.

解釈

  • マグマは早い段階で水に飽和している(斑晶ガラス包有物での濃度が一定なので)
  • 塩素はマグマから逃げていっている.
  • 15-11と6-8の間に,フルイドが変化した(低塩濃度の気体一相から,低塩濃度の気体+高塩濃度の液体二相へ)
  • マグマの結晶化にともなう揮発性成分のメルトへの濃縮効果などをモデル計算すると,結晶化にともなって非現実的なほど大きなマグマは過剰圧(>75MPa)をためこんでしまう.過剰圧を現実的な値(<50MPa)にするには,マグマは泡沫状態だったとするか(縮みやすい),あるいは(2)過飽和の進行と脱ガス量がバランスした,と考えればよい.
  • 1.225Maの大噴火の原因に関する著者らのアイディア:
    マグマ中の過剰ガスの存在形態が変化(低塩濃度の気体一相から,低塩濃度の気体+高塩濃度の液体二相へ)

    マグマの脱ガス効率が低下

    マグマの過剰圧が増加

    大噴火
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