Kiyosu&Miyajima etal(1993)

by Isoji MIYAGI @ Geological Survey of Japan, AIST

Geochemical study of thermal fluids from the Myoko volcano. Chikyukagaku (Geochemistry). 27: 97-108. (my_id=G944)

(in Japanese with English Abstract)


目次

問題意識

これまでになされた火山ガスや温泉の研究の多くは,火山活動の盛んな地域(フロント)の火山を研究対象としてきた.逆にいえば,火山ガスや温泉の活動があまり盛んでない背弧側の火山は,あまり研究されていなかった.そこで,妙高山の噴気を調べてみた.


したこと

試料:

  • 南地獄谷の噴気ガスと温泉水
  • 北地獄谷の温泉水

採取時期:

  • 1990年6月と9月

測定内容:

  • 温度→熱電対温度計にて,現場で.
  • pH,化学成分→Kiyosu(1983)の方法による陽イオン(原子吸光),硫黄化合物(重量法),塩素(一部比色法),重炭酸(容積分析)
  • 水素同位体比,硫黄同位体比,炭素同位体比

結果

δD,δ18O:

  • 2グループある.δDとδ18Oの図(Fig.3)→ 多くの試料はこの地域の天水ラインに乗る(δD=8×δ18O + 20 (‰)).しかし南地獄谷の噴気地帯の硫酸型の温泉は,天水ラインからずれる.

    線状に分布するので混合線にみえる.混合だとすると,一方の端成分は天水で,もう一方は,δ18Oを+4〜6‰まで外挿すると,δDは-30‰ぐらいになる(活発な火山の噴気の値とほぼ同じ).

硫黄同位体比

  • 2グループある.
    ひとつは,北地獄谷のグループ(硫酸のδ34Sが高い.火山ガスの二酸化硫黄の自己酸化還元反応によると思われる).
    もうひとつは南地獄谷のグループ(硫酸のδ34Sが低い.活発な火山の噴気の値とほぼ同じ).

炭素同位体比

  • 2グループある.
    ひとつは北地獄谷のグループ(溶存炭酸のδ13Cが高い.地下で灰長石などの岩石と火山ガスが反応して生じたであろう重炭酸との間で同位体平衡が,考えられる).
    もうひとつは南地獄谷のグループ(溶存炭酸のδ13Cが低い.活発な火山の噴気の値とほぼ同じ).

深部熱流体の起源

温泉水の化学組成は,深部から供給された熱流体が,基盤の堆積岩と反応することによって説明可能.


深部から供給された熱流体(塩化ナトリウム型)の起源は,大部分がマグマ起源だと考えられる.東北日本の火山性地熱地域や,箱根でも,深部から供給された塩化ナトリウム型の熱流体の存在が推定されている.

About this page: