Mysen&Virgo(1980b)
by Isoji MIYAGI @ Geological Survey of Japan, AIST
Solubility mechanisms of carbon dioxide in silicate melts: a Raman spectroxcopic study. American Mineralogist. 65: 885-899. (my_id=G513)
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問題意識
炭酸ガスは水に次いでマグマ中に多く含まれる揮発成分であり,マグマの発生プロセスに影響を与える.例えば,CO2を含まないマグマに比較して,含むマグマではよりシリカ重合度の高い鉱物が安定になる.つまり,マグマ発生の場にCO2が存在することにより,発生するマグマの組成はより苦鉄質になるとされる.
CO2成分がどのように硅酸塩溶融体の構造を変化させ,鉱物の安定条件に影響をあたえているかは,よくわかっていない.
Holloway et al (1976)によれば,CO2の溶解度はメルトのCa/(Ca+Mg)比と正の相関がある.
Eggler&Rosenhauser(1978)はCO2がシリケイトの相平衡に与える影響を調べた結果,CO2の溶解機構として以下の反応を考えた.
CO2(ガス) + 2O- (非架橋酸素) = CO32- (メルト) + O0 (架橋酸素)
したこと
硅酸塩溶融体へのCO2の溶解メカニズムを,ラマン分光法を用いて調べた.
調べたモノ,条件:
- 硅酸塩溶融体の組成:CaMgSi2O6 と NaCaAlSi2O7.試薬から合成(SiO2, Al2O3, MgO, CaCO3, Na2CO3).
高圧実験
- 固体圧力媒体のピストンシリンダー装置.ボイド&イングランド型.セルはハーフインチ
- 試料容器,3ミリφの白金管
- 実験温度範囲:1300℃〜1700℃を,4〜5にわけて.
- 実験圧力:10キロバールと20キロバールの2つ.
- 温度の誤差=6〜10℃ぐらい.R型熱電対を使用.
- 圧力の誤差=±1キロバールぐらい
- 保持時間は,1700℃の実験のときに1時間ぐらい.
- 実験終了時の試料冷却速度=250℃毎秒ぐらい
常圧実験
- 比較のため,CO2の入っていない試料を,1気圧,1500℃,30分の実験で別途合成.
分析
- 試料は,急冷ガラス化された実験産物のうり,気泡を含んでいない0.5-1mmのチップ
- CO2の定量は,ラマン分光によった.励起はアルゴンレーザーを使用.
問題点
- メルトの構造が凍結によってガラスに反映されているかどうか疑問
- 図5,図7,図8のデコンボリューションはどのぐらい信用せきるのだろうか.
わかったこと
CO2の溶解度
- CaMgSi2O6への溶解度の温度・圧力依存性が,図1にのっている.10キロバールでは温度依存性がほとんどなく,ほぼ2重量%とけている.20キロバールでは3重量%だが,1700℃付近で極大(5重量%)を示す.
- NaCaAlSi2O7への溶解度の温度・圧力依存性が,図2にのっている.10キロバールでは,温度が高くなるにつれ溶解度が低下する.1250℃では約5%,1350℃では4%,1500℃では3.7%ぐらい.20キロバールでは,CaMgSi2O6とは対照的に1450℃で溶解度の極小(4.5%ぐらい)をもち,1550℃では約6%に増加,1350℃ぐらいでも5%ぐらいに増える.
要するに何がわかったか
CO2はメルト中に主にCO32-の形で溶解する.このCO32-は付近にあるカチオンとくっついてCaCO3を形成すると思われる.
2 SiO44- (メルト) + 2 CO2 (ガス) =
<Si2O64- (メルト) + 2 CO32- (メルト)
2 SiO44- (メルト) + 3 CO2 (ガス) = Si2O52- (メルト) + 3 CO32- (ガス)
NaCaAlSi2O7とCaMgSi2O6とを比べたとき,NaCaAlSi2O7メルトのほうが天然の玄武岩質マグマに近いと思われる.