Sato&Kayahara(1993)
by Isoji MIYAGI @ Geological Survey of Japan, AIST
Dacite lava including fresh and oxidized biotite phenocryst -Oxygen fugacity in Terayama dacite magma, Osaka, Japan-. J.Mineral.Petrol.Econ.Geol. 88: 339-351. (in Japanese with English abstract) (my_id=224)
目次 |
フィールド
- 寺山デイサイト
- 大阪市羽曳野(はびこの)市の東端に,北東南西に約3km,南東北西に約2kmにわたって分布する,新第三紀中新世のデイサイト溶岩(黒雲母角閃石斜方輝石デイサイト).
したこと
地質調査をした.その結果,寺山デイサイトには
- 黒雲母斑晶の新鮮なものと
- 黒雲母斑晶が酸化変質したもの
の二種類あることがわかった.
そこでこれらの成因を考えるため,
- 岩相をさらにタイプ分けし,
- それらの分布を調べ,
- 全岩化学組成や鉱物の特徴を調べた.
わかったこと
- 興味
- 黒雲母の変質の原因は何か.
岩相は以下の4つに分類できた
- F型:新鮮な黒雲母斑晶を含む
- O型:赤褐色に変質した黒雲母斑晶を含む
- M型:黒雲母斑晶は無色であるが光沢が弱くくすんでいる
- MA型:黒雲母斑晶はM型同様部分的に変質しているほか,斑晶量が少ない
F型以外では,黒雲母の変質が見られる.変質は黒雲母の表面(リムと劈開面)でみられ,イルメナイト,マグネタイト,ヘマタイト,および粘度鉱物が析出している.
これらの岩相の,岩体内における位置は,
- O型は岩体の中心部に位置する.
- F型は岩体の周縁部に位置する.
- O型はF型の上位に位置している.
- O型とF型は連続している(冷却節理の不連続や,急冷層など,境界がみあたらない)
- F型の石基組織には,急冷された証拠がみあたらない
- O型の石基や角閃石は,赤色でない
マグネタイトとイルメナイトが共存しているので,温度・酸素分圧を求めることができた.
- M型 → 推定温度は680℃〜710℃,推定酸素分圧は10-16〜10-14.5
- O型 → 推定温度は710℃〜740℃,推定酸素分圧は10-14〜10-14.5
- 知識:約700℃,fO2=10-14で,黒雲母,マグネタイト,イルメナイトは平衡に共存できる(Wones and Eugwter, 1965)
- 知識:黒雲母や角閃石を含む通常のマグマのfO2はFMQ〜MHバッファと同程度である(Carmichael et al., 1974)
結論
この論文の筆者らによる↑この事実の解釈:
- 黒雲母にみられる変質は,噴火時の酸素分圧の上昇によって引きおこされたのではない.
- 噴出直前のマグマ混合?
- 脱ガスに伴なう黒雲母の脱水分解?
宮城はこれ↑とは逆の解釈をしているが,現時点では自説の立証材料を持っていない.