Ohta&Maruyama etal(1995)
by Isoji MIYAGI @ Geological Survey of Japan, AIST
過去の造山帯中に産する火山岩からマントルの進化を読む試み.月刊地球, 17, 164-170. (my_id=G1084)
したこと
「付加帯地質学」を駆使して,どのように35〜30億年前のマントルに関する情報を得るかについて,解説した.
- 知りたいこと:
地球のマントルの化学組成は,全地球史をつうじてどのように変化してきたのだろうか?
- 課題:
1970年代以降この課題へ挑戦が行なわれてきたが,色々問題があった.
- 過去の火山岩が,その当時の地球上のどのタイプの場所(テクトニックセッティング)で生成したのかがわからない
→現在は,火山岩の組成が場所により異なることが知られているので,場所を特定しないと話にならない - 過去の火山岩は,その後〜現在までに変質や変成作用をこうむっていることが多い
→生成時と現在とでは化学組成が異なっている可能性があり,この問題を回避しないと話にならない. - テクトニックセッティングを火山岩の化学組成から推定することと,同じテクトニックセッティングにおける火山岩の化学組成の時間変化を推定することは,両立しない(自己矛盾).
- ブレークスルー:
- 日本のお家芸である「付加帯地質学」の手法を用いると火山岩の産状だけからテクトニックセッティングを推定することが可能になる.
- これにより,同じテクトニックセッティングにおける火山岩の化学組成の時間変化の推定が可能になった.
- 実験岩石学を用いて火山岩の組成とマントルの化学組成の対応づけることにより,マントルの化学組成の長期的な変遷をしることが可能になった.
- わかったこと
- 北西オーストラリアの「北部ピルバラ地塊」の詳細な地質調査を行なったところ,多量の中央海嶺玄武岩と海洋島火成岩があることがわかった.
- これらは,化学組成を調べたところ,現在の中央海嶺玄武岩と海洋島火成岩から推定されるよりもはるかに鉄に富むマントルを起源とするマグマであることがわかった.
- これらは,岩石の高温高圧融解実験結果と比較したところ,現在よりも高温のマントルから発生したマグマであることがわかった.