新規火山
by Isoji MIYAGI @ Geological Survey of Japan, AIST
はじめに
多くの活動的な火山を抱える日本では,次の噴火に備えて様々な取組みがなされています.例えば過去の噴火活動履歴を把握し,予想される将来の災害をハザードマップで周知する,等の取組みです.このように,既存の火山体が存在する場合には,その火山が将来もたらす可能性のある災害について想像することは,比較的容易です.
これに対し,現在火山体のない地域において,将来火山が新規出現することを想定した対策がとられたことを耳にすることはありません.しかし実際には,秋田県の一ノ目潟(藤岡,1959;Katsui et al., 1979; Takahashi, 1980),山形県の肘折火山(杉村,1953;Ui, 1971;川口・村上,1994),仙台の安達火山(蟹沢,1985),そして北海道の銭亀火山(長谷川・鈴木,1964;山縣・他,1989)のように,それまで顕著な火山体の無かった地域において突然爆発的な噴火が起きた例はいくつも存在します.
もし将来数万年にわたる国土の利用方法を考える場合には当然,その場所に火山が新規出現する可能性について,考慮しなければならなりません.新規火山の噴火への対策を科学的に検討するためには,マグマがどのように蓄積しどのように噴火に至ったかを理解することが重要な基礎となるでしょう.
そこで,既存の火山体の無い地域に火山が新規に出現した最近の事例として,筆者は東北日本弧山形県肘折火山のマグマプロセスを研究しています.